ゆたり倶楽部

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◎ベーカリー

パン茶房小梅堂
[栃木県芳賀郡]

梅の里に佇む
手作りを大切に楽しむパン工房

　梅の木が通りに沿って立ち、ひと気のない静かな里山の景色の中、そこにログハウス風の建物がありました。扉を開けるとベルの音が心地よく鳴り、香ばしい匂いと暖かな空間が迎え入れてくれます。
　「小梅堂」は2009年からオープンした天然酵母のパン屋さんで、伊藤寛司さんと奥様の順子さん、ご夫婦で営んでいます。

　もともとはご主人が陶芸家であり、順子さんはジュエリーのデザイナーなどをしているそうですが、自分たちで何でも作ることが好きというお二人。10年かけて自宅もこの店舗もご主人が建てたとのことです。
　「パンを作るのに凝っていて、たくさん焼いて食べきれない時に友達におすそ分けをしていたのが、このお店をはじめるきっかけでした。」研究熱心な順子さんは本などを参考にし、独学でパン作りを続け、それをご近所さんやご友人におすそ分けしていたそうですが、それが好評で「どうせならパン屋を始めようか!」というご主人の提案もあり、きちんと工房も設け「小梅堂」をオープンしたのです。
　自分たちの食生活もパン作りも「できるだけ自然に近いものを使いたい」という姿勢ですが、あまり形にはこだわらず、身近にある体にやさしい安心な素材でパン作りをしています。北海道産小麦粉をはじめ、栃木産などの国産小麦を使用し、市販の天然酵母や自家製酵母などパンによって酵母も使い分けているとのこと。乳製品や卵、加工油脂などは使用せず、小麦本来の旨みや味わいのあるパンに仕上げられています。シンプルなバゲットや食パンなどはもちろん、ちょっと個性派なパンもおすすめで、ココナッツの甘い香りがいっぱいの「椰子の風」(¥350)はオーガニックのココナッツパウダーがふんだんに練り込まれ、一口食べるとふんわりと優しい甘味が広がります。

　カフェも併設されていて、オリジナルブレンドのオーガニックコーヒー(¥400)や無農薬の和紅茶(¥400)などこだわりのドリンクメニューに、ベーグルサンド(¥350～)などもいただけます。ベーグルサンドに使われるジャムやスモークポークなども自家製。「とにかく作るのが好きで、その季節の美味しいものをたくさん仕込んだら、それをおすそ分けするような気持ちで商品として棚に並べる。そんな感じでやっています。」ブルーベリーやラズベリーなどの自家製ジャムはこの敷地や近隣で採れたものを使用していて、その他自家栽培の野菜などもパン作りに生かしています。
　「いろいろやりたいことはあるけれど、あまりあれこれやると手が回らなくなってしまうから、まずは自分たちの生活を丁寧にして、できる範囲のことを無理なくやっていきたい。」
　そう語る順子さん。「小梅堂」の名に込めた思いのように、あまり欲張らず、この場所で慎ましく日々を営むこと。それが伊藤夫妻の「小梅堂」スタイル。そんな風に慎ましくも自然の中でじっくりと素材に向き合い、季節の美味しさが込められたパンと心地よく流れる時間を味わいにきませんか?(eMi.S)