すっかり木々の葉も落ち、秋色から冬の景色に変わりつつあるこの頃。ひゅうるりと思わず身を縮めてしまうような北風が吹いてくると、そろそろ香りの出てきたかりんを蜂蜜に漬けよう、とか、またいつもの農家さんにお願いして大根を干そう、とか、冬支度のことを考えてなんだかうきうきした気分に。冬の保存食、というとなんか少し大げさな気がしますが、いろいろな食べ物が一年中スーパーで買える今だからこそ、旬の食べ物を大事にして、ほんの少しずつだけでもお愉しみ程度から何か漬けたり、干したりといった保存食を作るのもまた季節を感じ、新しい味の発見になる面白い作業だと思います。
保存食を作る、といっても私の場合何かに漬けたり、干したりするだけのいたって簡単なもの。ちょっとした注意点さえ気をつければ、あとは時間とお日様と北風が美味しくしてくれるものです。果物のいろんな蜂蜜漬けは冬の風邪予防などにと以前ご紹介しましたが、
もうひとつ私が凝っているのはいろんなものを「干す」ということ。大きいものは大根まるまる一本から、小さなちょっとしたものはみかんの皮まで。長い期間だったりほんの半日だったりといろいろですが、本当にやるのは「干す」ということだけ。簡単ですが、たったこれだけで旬の味をいつまでも長く愉しめたり、そのままより美味しくいただけたりします。
たとえば白菜。これを切り分けて、軸を落とし、大きい外葉は一枚一枚広げてザルに並べて天気のいい日中にお日様に当てておきます。そしてそのまま、その日の夕飯に使うだけでもよいのです。半日でも干しておくと野菜の旨みが増して、いつもの料理もぐっとレベルアップ。こんな風に秋から冬の間はその日に使う野菜やきのこをちょっとの間干しておくのは手軽で野菜もきのこも美味しくいただけておすすめです。
次は美味しいおやつになる干し芋。こちらはぐーっと寒くなる頃に作るのがカビたりなどの失敗がなくできます。寒くて先三日ほど天気が続くというような天気予報を耳にしたら、それが作り時。お芋はじっくり蒸して、皮をむいてから切るか(切る際は包丁より糸や針金などできるとくずれにくい)丸のままで。風通しのよいところで3日ほど干します。(夜間は室内へ)これだけであの干し芋が出来上がります。これを知ったときはおおっと興奮。「なんだ、いつも買ってる干し芋結構簡単じゃない!」と張り切って作ったのですが、ザルにいっぱい並べたお芋が猫に食い散らされていたのにはがっかりでした。滅多にそんなことはないようですが、吊って置ける干し物専用の網を用意しておくと安心です。
さらにもっとじっくり干すのは大根まるまる1本を干す干し大根。冷たい空っ風の吹く12月半ばあたりから紐で縛り付けた大根を軒先にぶら下げて置きます。これがなかなかの眺め。お日様に透き通るような大根の白が美しくうっとりとしてしまいます。これはいつもお世話になっている農家さんで知ったもの。たくさん採れる大根を上手に長く食べられる昔からの保存食。寒い風にさらされて白い大根はしわしわになり、やがて水分を失い、尻尾のほうがちりちりと縮んできます。色もだんだん渋い山吹色っぽく。こうなるとあの大根とは違うとっても深くひなびた味わいに。少し水分を残した状態で取り込んだものはそのままスライスして食べても美味しいし、本当に最後までカラッカラにしたものは醤油やみりん、唐辛子、にんにくとともに漬け込んだりします。これをご飯と炒めた大根飯は絶品。日本人でよかったと思わずにいられない、そんな味です。
こんな風に遊び感覚でこれは干したらどんな風になるかな、なんてわくわくしながらいろんなものを干してみて新たな味、それをまた料理に活用することであなたの食生活がまた少し広がること間違いなしですよ。
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