この記事は、2010年6月に作成したものです。PANEMは震災の影響により閉店いたしました。
田んぼの脇の細い道を行くと、緑の中に現れた古い大谷石の蔵。その蔵の中で日々大きくて素朴なパンが焼かれています。
パン工房パネムは卸を中心とした、イタリア人のご主人が焼き、奥様とともに営むパンの工房。もともと小麦粉を扱う仕事をしていたオーナーのアッジョ・パオロさんは合気道の習得のため来日し、ピッツェリアの勤務やパン職人として働いていました。やがては石蔵でパンを作りたいという想いをもち、工房ができるような蔵を探していたところ、自然に囲まれた環境の益子の大谷石の蔵に行きついたとのこと。何故石蔵にこだわったのかと言えば、イタリアでは昔から石の建物のなかでパンを作り続けているから。石の蔵は呼吸し、酵母はその蔵に住み着き、そこで熟成されていく。それが個性のある独特の風味を持ったパンを生み出す。日本でも昔から蔵造りの味噌や醤油があるのと同じではないでしょうか。
そしてパネムでは全て薪窯でパンを焼いていますが、その薪窯は通常は陶芸のための窯を造る益子の窯師の方に依頼し、作り上げられたもので、約3000年前から変わらぬ型の薪窯です。大谷石に囲まれたその窯の中は見上げるほど大きく、レンガがドーム状に積み上げられたグレコローマン式というもの。この窯に合わせてあらゆる道具が大きく、日本サイズではなかなかお目にかかれないものばかり。
その大きな窯で焼かれたパンはどれも大きく、素朴。パネムのベーシックなパン「ルスティコ」は2kg(3520円)か1kg(1730円)サイズというもの。焼かれて並んでいる姿にやはりイタリアのパン文化を感じ、圧倒されるほど。
また、パンには全て厳選した素材を使用しており、水も毎日汲み上げられる井戸水を使用しています。もちろん小麦粉を扱っていた仕事をしていたパオロさんだからこそ、粉には格別のこだわり。やはり日本とイタリアでは小麦の質も製粉のやり方も大きく違い、そのまま使っていては自分の思うパンは作れないし、香りも全然足りないとのこと。できる限りイタリアのパンを再現しようと石臼引きの粗めに仕上げた特別な粉を使用しているということです。また、日本では珍しい国産のスペルト小麦(麦の原種)を使用したパン「パンディスペルタ」1kg(2400円)も。いずれも香りは強く香ばしく、いわゆる国産小麦・天然酵母で焼いているパンとはまた違う、粉そのものの香りが前面に出た力強い味わいです。
ここまでいろんなものにこだわるのかと言えば、やはりそれは全てイタリアの昔ながらの製法のパンを焼くため。小麦粉と水と蜂蜜でおこした酵母をかけ継ぎ、その自家製の酵母と粉と塩と水という極めてシンプルなパン。今ではイタリアでも伝統の製法でパンを焼く職人は少なくなってきているということです。自分たちの求めるパンを作るために今後は製粉も自家製にしていきたいという思いも強く感じました。(e.s.)
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(ホテル、レストランなどを対象にした受注生産を基本としております。
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4月から11月まで日曜祭日はピッツェリアをオープン(雨天の場合はお休み)
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