ゆたり倶楽部

[スイーツ] 記事数：30

◎スイーツ

おやつ工房 Le petit Chevreuse
[栃木県市貝町]

スペシャルではなく、デイリーなお菓子を―
焼き菓子に、忘れられない思いを込めて

　手作りの焼き菓子とフランスから届いた雑貨、ハンドメイドグッズを扱う小さなお店「おやつ工房Le petit Chevreuse」。扉を開けると、バターの甘い香りとぬくもりあるアットホームな雰囲気が、店内いっぱいに広がっていて、ほっと心を和ませてくれました。

　「以前住んでいたことのある、パリ郊外の町の名前を店名にしたんです」と、懐かしそうに話すのがオーナーの横山さんです。

　一度は別の職に就いたものの、お菓子屋さんの夢をあきらめきれず、新聞配達をしながら修業時代を過ごしたという横山さん。様々な人との出逢いを経て、やがて本場フランスのサロンで働くことに。たどたどしい会話、不慣れな海外生活…そんな横山さんを励まし、支えてくれたのがホストファミリーやご近所のマダム達でした。「日本人の私を、まるで自分の子供みたいに可愛がってくれたんです。毎日のように、とびきりの笑顔で手作りのおやつを持ってね」家族のためにお菓子を作る習慣のあるヨーロッパ。各家庭ならではのレシピで作られる、愛情たっぷりの素朴なお菓子の味が忘れられなかった横山さんは、いつか夢が叶う時がきたら、このやさしい町の空気が伝わるお店にしようと心に決めていたのでした。

　「お母さんが心を込めてご飯やお菓子を作る…。それだけで、何でも美味しくなっちゃうんですよね。私は、あの町のマダム達が教えてくれたような、スペシャルではなく、デイリーなお菓子を届けたい。だから『おやつ工房』なんです」
　季節感のある焼き菓子を中心に、ひとつひとつ丁寧に作られる横山さんのお菓子。「おやつ」というやさしい響きにぴったりのお菓子を一口頬張ると、その深い味わいのなかに込められた、あたたかな思いがじんわりと伝わってくるのでした。（m.m.）