かすみがうら市内の田園地帯。長閑な風景に囲まれた場所に「御野立庵」はあります。築150年以上という古民家を移築した店内には、黒く煤けた太い梁や囲炉裏のモニュメントが鎮座し、そこに流れたであろう悠久の時間を感じさせます。
「そばが好きだ、という一心で店を始めた」と話す店主・友常さん。そんな同氏がこだわったのは「そばは噛んでこそ甘みが感じられる」という点です。同店のそばは常陸秋そばを使用した江戸そばで、細打ちでありながらしっかりとした強いコシが特徴。一口噛むごとに、そばが本来持つ香りや味わいが口の中に広がります。そばと一緒に食べる地元の有機野菜を使用した天ぷらも逸品。そば粉を混ぜた、特製の炒り塩を少しつけて口に運べば、サクッと小気味よい音が響きます。また、付け合せの漬物やけんちんのつけ汁に使われている味噌も全て自家製。なんと原料である米や大豆から友常さん自身が育てたものだそうです。惜しみなく手間ひまかけられたからこそ、優しく、心に残る味になったのでしょう。
供された料理を平らげると、そば湯がテーブルに運ばれます。少しとろみのある独特のそば湯はなんとも濃厚な味わい。窓から覗く四季折々の景色を眺めながら頂くそば湯は、食事の終わりに用意された至福のひとときとなります。
「そばが基本にあって、それに合うつゆ、天ぷら、付け合せがある。それぞれが主張してもいいが、最後には全てが調和する。そんなそばを目指しています。そして、うちのそばを一口食べてお客さんの顔がほころぶ瞬間、それが何よりも楽しみなんですよ」と笑顔で語るそば一筋の店主。同氏が生み出す珠玉の一枚は、お腹だけでなく心も満たす素朴なご馳走でした。(Y.H)
茨城県かすみがうら市中志筑1571-1
TEL/0299-23-5000
営業時間/11:00〜15:00
定休日/月曜日、第3火曜日(祝日の場合営業、翌日休み)
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