120年の歴史がある蔵をなんとか生かせないか。何代も引き継がれた伝統ある建物を、多くの人が集まる場に・・・。そんな思いから「日本茶喫茶・棗」を始めたのは2003年のことでした。開店前には、区画整理で店舗前の道幅が広がるため、影響で建物を解体せずに移動する工事(=曳家)を行いましたが、その重さは約100トンもあったとか。なにしろ壁の厚さは約40cmもあり、観音開きの扉を閉めると近隣からの火事を防げるほど頑丈で重厚な造りのものなのです。
障子を引き店内に足を踏み入れると、店奥から迎えてくれたのはオーナーの平野さん。蔵というと荷物を入れる倉庫のようなイメージがありますが、この蔵は座敷倉として住居用に造られたものです。丁寧な細工が施された欄間、階段下の引き出しなど、隅々まで精巧な造り。男性のお客様も多いようで、この日も読書をしながら時間をかけてお茶を楽しむ方に出会えました。
米穀商をしていた頃に使われていた戸棚を再利用したテーブルで、お抹茶を飲みながら季節の練り菓子を頂きました。「あぁ、おいしい」思わずそうつぶやいてから、もう一度両手でお茶碗を包み、ゆっくりと飲み干すと独特の苦味と甘さが口の中に広がります。
2杯目は平野さんに教えていただきながら、自らお茶をたてることにしました。湯釜から茶碗に湯をそそいで茶筅で泡立てると不思議と気持ちが落ち着き、自然と所作にも気を配りたくなります。
「お作法は色々あるけれど、美味しく入れて、楽しく飲んでほしい」と話す平野さん。丁寧にお茶を入れて、大切な時間を楽しむ。身の回りのことを丁寧にすると、自分を大切にすることにつながるのかもしれません。この日のお茶は、心まで温まった気がしました。(e.suwa)
住所/群馬県高崎市宮元町223
TEL/027-326-1167
営業時間/11:00~17:00 (金土日 11:00〜19:00)
定休日/水・木曜日・年末年始
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)