秋晴れの空の下、紅葉彩る山々を背景に「やきあがりました」のノボリがあがりました。午後1時、「薪焚石窯ぱん工房 萬堂本舗」の開店です。
「何気なく見ていたテレビ番組で石窯が映って…、それでふと自分でも石窯を作ってみようと思ったんです」そう懐かしそうに話す店主の引野さん。休みを利用しながらやっとの思いで出来た自作の石窯を目の前に、それじゃあパンでも作ってみようと、今度は奥様とパン作りに挑戦。知識も経験もないお二人でしたが、昔ながらのシンプルな製法と石窯で焼き上げられたパンは、思いのほか周囲の人に大好評。やがて引野さんは、もっときちんとした形でパン作りをしていきたい、どうせやるなら手作りということに徹底したいと次第に思うように。そして、引野さんが次に手作りしたもの―それは、なんと一軒のパン工房だったのです。
工房の扉を開けると、焼きたての香ばしい匂いを漂わせながら数種のパンが並びます。パン用小麦粉に小麦全粒粉を配合した田舎ぱん、生地にチーズを練りこんだ香りの強いチーズぱん、葡萄や山葡萄、クランベリーまで入った胡桃ぱん…。石窯だからこそ生まれる香りや旨味に満ちたパンたちは、外はサクッと中はしっとりとしていて、一度口にしたらやみつきになりそうな独特の深い味わいが。噛みしめる度に感じられるその美味しさに、思わずため息が漏れそうになりました。
「自己満足の素人ぱん」と謳う引野さんは、石窯でクッキーやラスクなどの焼き菓子も作ってしまいます。「自分がね、食べたいものを作るんです。もう、恥ずかしいくらいに、素人!」と、笑いながら話す引野さん。石窯から作りだされる心豊かな味わいは、引野さんが最高の素人だからこそ誕生したのかもしれません。(m.m.)
住所/栃木県宇都宮市上小倉町2682-1
TEL/090-8742-4896
営業時間/火曜・金曜13:00〜19:00
定休日/火曜・金曜以外
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)