うつわを中心に暮らしの雑貨などを扱うこちらのお店は、始めてからもう20年以上になるそうですが、実はもとは100年の歴史をもつ老舗の人形店だったそうです。お店の名前『慶瑞(けいずい) あかまんま』は“いい兆し”と“お赤飯”のこと。お祝い事に携ってきた人形店の心を受け継いでいきたい、そんな思いを込めてつけたのだと、店主の田口さんが教えてくれました。取材したこの日は翌月が端午の節句ということで、お店には小さな兜が置かれていました。人形店の頃から製作を続けているオリジナルの作品なのだそう。周りにしっくりと馴染むその光景に、ふと人形店の歴史が実際にそこにあるように感じられたのでした。
まさに春爛漫の陽気。窓からそそぐ柔らかな陽射しを受けて、うつわたちがつややかな光を放っていました。こっくりとした風合いの土物や現代的な印象の磁器、丁寧なカットがほどこされたガラス器など、素材や様式も様々です。納得できるものだけを揃えているという田口さん。うつわ選びで大切にしていることをたずねてみると「使いたい気持ちを掘り起こすこと」という言葉が。「日本人ならではだと思うんですが、目で見たときの姿や手に持ったときの質感、料理との調和、うつわ同士の組み合わせなど“うつわを愉しむ感性”が私たちには備わっていると思うんです。もちろん使いやすいという基準もあって、それはとても大事なんですが、使いやすいを超えて、使いたい気持ちになるうつわというものがあるんですよね。その使いたい気持ちを掘り起こすようなうつわを薦めたいと思っているんです」。
また田口さんは、大事なうつわだからといってしまい込まず、普段づかいしてほしいと言います。独学で金継ぎの技法を学び、こちらで扱ううつわなら、できる範囲で修理もしてくれるそうです。「少し見た目が変わっても、それはそれでまたいいものなんですよ」と笑顔。うつわが大好きな気持ちが伝わってくるのでした。(m.o)
住所/群馬県藤岡市藤岡405
TEL/0274-22-1746
営業時間/10:00~19:00
定休日/火・水曜日
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)