海岸近くを通る国道245号から海側に少し入った住宅街に、真っ白な壁に青いドアが目を引く小さな洋菓子店があります。週4日営業で人通りの少ない場所にありますが、口コミで評判が広がり、遠方からの客やリピーターが次々と訪れています。閉店時間前に売り切れることもしばしばで、お目当てのものがあれば予約がおすすめです。
店のドアを開けて中に入ると、バターの風味がきいたお菓子の香ばしい匂いに包まれます。3坪の店舗スペースには、焼き菓子を中心に、ロールケーキ、エクレア、バナナクレープ、チョコレート(6月〜9月は休み)など約50種類以上の品々が並んでいます。店主の上野昭子さんが目指すものは、古典的なスタイルのフランス菓子。「複雑ではなくシンプルな味。シンプルといっても薄い味ではありません。はっきりしていて、食感も少し歯ごたえがあるくらいが好き」と話します。ストレートな味だけに、ごまかしはききません。粉、バター、卵、生クリームなど材料の質は、手に入る範囲で最も良いものを仕入れています。技術面でも、結婚前から菓子作りの勉強を長く続けて技に磨きをかけ、菓子教室を開くなどの経験を積んできました。
約20坪の工房では、上野さんと、上野さんが主宰する菓子教室の生徒さんたちのスタッフで、ひとつひとつ丁寧に菓子が作られています。例えば、洋酒で煮込んだイチジク入りのパウンドケーキ「フィグケーキ」(1500円)は、しっとりとした上品な甘さに仕上げられています。米粉を使ったスフレ生地のロールケーキ「スフレロール」(230円)、フルーツたっぷりのフランスの伝統的なゼリー「パート・ドフリュイ」(110円)などもおすすめです。
上野さんは年に一回ほど、フランスに出かけます。「フランスではケーキは生活の一部になっています。本場の空気を感じることで良い刺激を受け、またがんばろうという力が湧いてきます」と。古くから伝わる素朴なスタイルを探求する道は、まだまだ続きます。(K.K.)
茨城県日立市国分町3−2−28
TEL/0294-37-0767
営業時間/11:00〜18:00
定休日/木曜
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