益子の町の、焼き物屋さんが立ち並ぶ通りから少し外れた場所に、ひっそりと、町の景色に馴染むようにそのお店はありました。古い建物の窓からのぞく店のディスプレイは、昔懐かしさと新しさを感じる、何ともいろんなものが混在した、子供の頃の好奇心みたいなものを呼び起こさせられるような空間で、わくわくしながらそこに足を踏み入れるのです。
ここ内町工場は古家具・道具、雑貨、古本を扱うお店。○○屋と限定できないほど様々なアイテムがたくさん集まっていて、それが雑多にならずぴったりと収まるべきところに収まり一つの景色になっています。お店の名前が『内町工場』というのは、「もともとここは40年前までは工場だったんです。で、この地域が内町だから内町をつけて。いろいろ考えたんですけど『工場』ってつくと“しばり"がないんですよね。」と語るのは、内町工場のオーナーの佐藤一貴さん。もともと隣町でギフトショップの経営をしていましたが、前々から益子でお店をやりたいという思いがあり、やっと良い物件との出会いがあったので、今年の2月にこの内町工場をオープンしたのです。
お店に並ぶ古いものは、かつては仕入れたりもしていましたが、今はここに来るお客さんや地元の人から、自然にものが集まってくるそう。自分で直したり、本当に古くなってしまったものは分解して別のものにしたりと、古いものはちゃんと手を加えて価値のあるものにしたいと言います。また、この古いものに混じって新しい雑貨もあり、「古いものと違って新しいものは直感で選んでます。こういうもの、と決めずに直感でお店の雰囲気に合うものをと。あと、ちゃんと実用的であることも選ぶポイントです」と言う佐藤さん。古家具や古道具の中にさりげなく一緒に並んでいる新しい雑貨。ただ“かわいい"とか“いい感じ"なだけでなく、確かに「あ、これ使えるな」という堅実なアイテムが並んでいます。
また、ここを訪れるお客様は若い人や家族連れから年配の方と様々。特に佐藤さんは、地元のおじさま方が度々ここに寄ってくれるようになったのは少し意外だったようです。そんな地元の方たちの中では、ここでのんびりと半日過ごしていく人もいるとのこと。そして地元の方たちとの交流が深まり、「うちにはこういうものがあるよ」と古道具や古本などを持ってきれくれるようになったそうです。特に古本をきっかけに話が広がるようで、「地元のお客さん、特におじさんたちの話を聞いて、話が広がっていって、またいろいろと吸収できるんです。古本なんか渋いセレクトになってきているんですよね。面白い方たちが多いですよ。」
オープンして間もないですが、着実にこの町の一部として定着し、人が集まる場となってきている内町工場。佐藤さんは「まだ一年目なのでいろんなことはやらずにどんどんお店の中を充実させたいと思います。ここに来れば何かあるというお店に。ただ、中庭にもう少し手を入れていきたいなと思って、お客さんが座って休めるスペースとか。」
焦らずに自分のペースで、そしてここに来るお客さんや地元の方たちとともに、この内町工場は形作られていくことを感じ、ますますこれからが面白く、また何か新しいものが並んでいるのかなと覘いていくのが楽しみなお店です。(eMi.S)
住所/栃木県芳賀郡益子町益子897
TEL/0285-81-7840
営業時間/11:00~18:00
定休日/水曜日
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