昔ながらの湊町の風情を残す、茨城県那珂湊。かつてこの地では水戸藩が大砲を鋳造するために反射炉が建造され、その跡地は復元されて史跡となっています。今回訪れた稲葉屋は、この反射炉跡にちなんだ黒飴「反射炉のてっぽう玉」の製造販売を行っている菓子店です。
歴史を感じさせる店構え、木枠のガラス戸を引くとカラカラと懐かしい音が響きます。創業は明治初期、現在のご主人で4代目。昔は駄菓子屋として営業していたそうですが、現在は和菓子や焼き菓子が中心です。「反射炉のてっぽう玉」(1袋315円)は、創業100年以来つくり続けているという看板商品で、黒糖をはじめ、三温糖や玉砂糖など4種類の砂糖を使用した甘さとコクがある逸品。一般的な飴と比べ水あめの使用量が少ないのが特徴で、優しく懐かしい甘さが口いっぱいに広がります。じっくり煮詰めた飴をひとつひとつ丸める昔ながらの製法で手づくりされているため量産はできないそうですが、変わらぬ味わいは時代を経て多くの人に愛され続けています。
店内の一角に展示されている木型は、「打ち物菓子」や「みじん菓子」と呼ばれる干菓子を作るための型で、松竹梅や鯛などの彫刻が施されています。古い伝統を持つ和菓子のひとつですが、この型は展示されているだけでなく、慶弔時などに注文を受けると今も実際にこの型を使ってお菓子を作るそう。同じく棚に展示された鉄製の人形焼の型は、今はもう使用していないとのことですが、代々続く老舗の歴史と伝統を感じさせてくれます。
てっぽう玉の他、ショーケースに並ぶのは桜餅や草餅、サブレ、饅頭など。白あんの入った「あんドーナツ」(74円)は、甘さ控えめのあっさりした味わいが人気の商品です。手づくりならではの優しい味わいと温もりいっぱいのお菓子たちが、お茶の時間を和ませてくれそうです。(伊藤)
茨城県ひたちなか市栄町1-7-21
Tel/029-262-3701
営業時間/8:00-18:30
定休日/不定休
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