二の宮公園から吹く風が心地よいこの地に「千年一日珈琲焙煎所」がオープンしたのは今年の2月。以来、こだわりの自家焙煎豆が揃う珈琲豆専門店として、または犬の散歩の帰り道にフラリと立ち寄れる癒しの場として、近隣の人に親しまれています。
店主の大坪さんがこの店をオープンしたきっかけは、「各国の珈琲豆を通して世界の暮らしの多様さを伝えたい」という思いと、「知的障害を持つ人に自立支援の場を提供する」という目的から。現在、この店の珈琲豆の選別=ハンドピックは、知的障害を持つお兄さんを含めた二人に任されています。実際に福祉の仕事に携わった経験もある大坪さんは「知的障害者の自立には働く場所が必要不可欠ですが、現状はとても厳しい。彼らが無理なく地域に溶け込んで自分の力で生活していけるよう、少しでも力になれたら」と話します。車イスでも動きやすいゆったりとしたテーブル配置や広めのトイレなど、店内の仕様も障害を持つ人の利用に配慮。のびやかな空間に、店内に満ちあふれる珈琲の香り。訪れたすべての人を優しく包み込むような気配が店中に漂います。
「喫茶もありますが、あくまで珈琲豆屋さん」というこの店の珈琲は、豆の個性を引き出しやすいと言われる「直火式」の焙煎方法。「火力のコントロールや排気の調整に気を使います。飲む人の体調によっても珈琲の味は変化するから難しいですね」と大坪さん。その人柄を反映してか、心地よい香りや酸味に誘われてスルスルと体内に入っていくような珈琲は、普段は珈琲が苦手という人でも美味しくいただけそうな味。文化人類学を学んでいたという店主の蔵書や珈琲専門書も並び、一人で訪れても充実した時を過ごせます。「見て楽しむだけではなく、新しい何かを生み出すような、そんなイベントも企画していきたい」と今後の夢を語ってくれた大坪さん。地域に根付きながらも自在に進化を続ける…そんなこれからの成長に期待感を抱かせてくれる珈琲店との出会いでした。(M.M)
茨城県つくば市天久保3-21-3 星谷ビル1F/G
TEL/029-875-5092
営業時間/11:00~19:00(日曜日は18:00まで)
定休日/火曜日・水曜日
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