ひなびた門扉をくぐり、手入れされた坪庭から畳敷きの和室に入ると「こんにちは」とあいさつをするお客さん。お目当てを探してのぞき込むショーケースには、レーズンやナッツが顔を出し、クープが開いた元気なパンが並んでいます。店主の大嶋さん曰く「男らしいパンが好き」だそうで、ざらりとした肌触りのものや、ライ麦が練り込まれたものなど、外国の古い絵本に登場しそうな、素朴なパンが揃っていました。
「工房チャツネ」で販売しているのは、レーズンなどのフルーツから酵母を起こす、いわゆる自家製酵母で発酵させたパン。イーストと比べて長い時間をかけて発酵させる手法のパンづくりで、気候に左右されやすく、仕込みから焼き上げまで手間がかかるため、大量生産向きではないとされますが、ゆっくりと発酵した分、小麦の複雑な旨みが広がる、伝統的手法のパンなのです。
保存料は使わず、“生きた酵母”を扱うパンづくり。酵母の活動に適さない夏場はお休み期間があります。いつも開いているお店が普通になった今、閉まっていると近所の人を心配させてしまったことがありました。また、ある時はより良い材料を求めて、地元の農家さんの畑で、背丈を越すようなライ麦の刈り取りを手伝ったことも。材料へのこだわりのこと、生活スタイルに合ったパンづくりのこと、まだまだやりたいことはたくさんあります。
お願いをして特別に、発酵途中の酵母種を見せてもらいました。じんわりと温かいケースの中に、なんともフルーティな芳香を漂わせながら、ぷくぷくと膨らむ酵母。「本当に酵母は生きているんだなって思います。自分の生活で何かあったときとか、全部パンに出ちゃうんですよ」小さな酵母の囁きに耳を傾けながら、小麦と酵母の風味を伝える、パンづくりをしています。(E.S)
住所/群馬県桐生市宮本町2-3-6
TEL/050-1190-2676
営業時間/11:00~18:00(パンがなくなり次第終了)
定休日/日曜日・月曜日・火曜日・水曜日
>ホームページ http://kobochutney.blogspot.jp/
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