宿の目の前は、白砂と青い海のオーシャンビュー。「鵜の島」の愛称で親しまれている裸島には中秋から早春にかけて、海鵜の姿が。美しい日の出に、旅情をかき立てる潮騒…。日立市・太田尻海岸に建つ「うのしまヴィラ」は、温かなおもてなしを大切に、そのロケーションと、地元食材に愛着を持った創作料理が自慢のお宿です。
3.11の大震災で、全壊した「鵜の島温泉旅館」。3年間の休業を経て2014年4月、名前も新たに「うのしまヴィラ」としてリボーン・オープンしました。昭和34年の開業から半世紀余り。3代目オーナーの原田実能さんは、震災後ゼロからのスタートとなった時、宿泊業とは違うビジネス形態も考えたと言います。暗中模索の日々で、方向を決めたのは長男の一言「小さな旅館がやりたい」でした。原田さんは「私たちの背中を見てくれていたんだと、旅館で勝負する決心がつきました」と振り返ります。以前の建物は、宴会ができる大広間や岩盤浴などもあり、昭和の香り漂うレトロな造りでした。再建の際は、2代目がビジネス客をメインにやってきた形態を、観光旅館へとシフトチェンジすることに。工業都市日立でのそれは、とても大きな決断でした。
14部屋から7部屋になった客室は、洋室・和室が各3部屋と、和洋二間続きの特別室が1部屋。お風呂は阿武隈山系の湧水で、pH8.2弱アルカリ性で美肌効果もあるとか。岩盤浴で使っていた鉱石を敷いたため、遠赤外線効果でポカポカ感が続きます。海辺にはリゾート感あふれるプールも。水面に映る情景がドラマチックです。さらに想いを込めたのが、コミュニティスペース「ユズリハhouse」。ここでは、ワークショップやコンサート、薬膳料理講座、ヨガなど、多彩な企画が生まれています。食事は、一般客も利用できる「カフェ&ダイニング海音(シーネ)」で提供。目の高さに太平洋を望みながら、地元食材にこだわり手間隙を惜しまない、心を込めた創作料理がいただけます。そして、宿の魅力を活かした新たな取り組みが「オリジナル結婚式」です。演出は、水戸市のウェディングプロデュースショップ「eclat(エクラ)」とのタイアップ。プライベートビーチのような太田尻海岸で、世界に一つの最高に温かなウエディングが行われています。
ご縁を大切にしている原田さんは旅館を営む一方、様々な地域活動に関わってきました。「仕事とは別に“志事”があると思っています。茨城や日立のことを伝える、茨城自慢が私の志事」と、旅館組合や観光物産協会、PTA、子ども会などで数々の役職を歴任。2015年8月には「ひたち野外オペラ第4回公演《マクベス》」の総合プロデューサーも務めました。
お話を伺う中で、原田さんの原点ともいえるエピソードを聞くことができました。それは休業期間中、旅館の敷地で開いた交流イベントでのこと。更地にテントを建て、地元食材で心づくしの振る舞いをしました。参加者の一人から「旅館という形はなくなってしまったけれど、今日、確かに“旅館”を感じました」と言ってもらったそう。「たとえハードが十分になくとも、おもてなしの心があるところが旅館。人と人とがつながる心地よい場所であり続けたい」。目に見えるカタチを超えて、訪れる人たちの心を温め安らぎをくれる—。海鵜が飛来する日立の景勝地・太田尻海岸には、そんなお宿があります。(R.Shibata)
住所/茨城県日立市東滑川町5-10-1 太田尻海岸
TEL/0294-42-4404
時間/チェックイン15:00〜
チェックアウト〜11:00
料金/一泊2食付き¥11000〜¥19000
定休日/火曜
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)