このお店をとっても大事にしているんだな、と、ブーランジェリーパルクのオーナー多奈村洋一さんとを見ていると、それが覆い尽くすようにして伝わってきます。多奈村さんの中にあるだろうお客さんに「美味しいパンを食べて欲しい」、「もっといろいろな味を知って欲しい」、「喜ぶ顔をみたい」、そして、「このお店をずっとずっと続けて行きたい」という、そういう気持ちに包まれていくのです。
生地を捏ねている手は休むことなく、そして、多奈村さんは入店の音が聞こえれば、即座に入口に目をやり、そして、「いらっしゃいませ」と声を出します。どんなに忙しくても、目や気持ちを配ることは怠らず、手元にある生地が来てくれる方を大事に思いながら形を成していくのです。
通常、パン屋の店内には大きな仕切りが一つはあり、それは大概が厨房との空間を遮断させているもの。それがブーランジェリーパルクにはありません。厨房は清潔を保たれ、整理整頓がされているし、仕切りのないことに違和感もなく、多奈村さんに「オープンなお店にしたかったんです」と言われるまで、まったく気が付くことがありませんでした。言われてみると、こんなにも開放的な厨房は珍しく、いろいろな形式は違いますが、カウンターにマスターが立っているような、そういう感覚に似たものを感じました。
多奈村さんは22歳から東京都内にある“神戸屋レストラン”で勤め、パン職人としての技術を修得しました。始まりは「パンが好き」という、本人曰く「軽い気持ちで始めた」そうですが、あっという間にパンに魅了され、奥さんのご実家のある足利に、35歳のときに自分のお店を開店させました。
発酵に時間をかけることで風味の違いを出すなど、神戸屋レストランで学んだことだけではなく、素材選びから焼き方まで、自分のこだわりを存分に発揮しています。焼きあがったパンからイースト臭がしないとか、やわらかい香りがするのも、多奈村さんの求めた味わい。香りはやわらかいのに、口に入れると、しっかりとした味があります。
仕事は朝の4時から始めているそうで、随分と早いように思うのだが、一つ一つを丁寧に作業する多奈村さんにとって、時間はいくらあっても足りないことはないのだろう。手を抜くことを知らない多奈村さんらしい。
焼きあがった頃にお客さんが一人二人と来はじめ、後を断たずに入店してくるのも、近隣の方たちにとって、多奈村さんの作るパンが美味しく、生活の一部になっている証しだ。(T.H)
住所/栃木県足利市西砂原後町1188-3
TEL/0284-44-5565
営業時間/9時~18時
定休日/月曜日・月曜日・第2,4火曜日
駐車場/有り(2台)
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(登録第5290824号)