大田原に「ブーランジェリーパンパン」という美味しいパンのお店があります。開店したのは2004年のことで、オーナーの三田和郎さんが生まれ育った環境、住所がそのまま、ブーランジェリーパンパンにもなったので、目立つような場所に構えているわけではなく、住宅地にさりげなく存在する、遠慮がちな佇まい。扉を開けると、パンの香ばしさが立ち籠めていました。
フランスパンのカリッとした硬さはちょうどよく、噛みながら段々と消えていく味を何度も追いかけたくなります。
あんぱんなどの菓子パンは、パン生地と具材それぞれの主張が相乗効果となっていて、口の中には旨さがずっと残っていました。
三田さんは、サラリーマンとして16年間過ごした後、パン屋に転職。そこで、“無添加のパン”というキャッチフレーズとその意味を知り、どんどんと良質の素材に引き込まれるように。同時に、レジから仕込み、成形など、知識や経験を深めると共に生じてくる疑問に対して、感覚的な回答しか得られないことも多く、そこで、東京都の葛西にある日本パン技術研究所へ、3ヶ月間、寮生活をしながらこなすカリキュラムで入所。パンの製造・技術面だけではなく、店舗の出入り口のあり方から経営のノウハウについても修得し、カリキュラム修了後、オープンに向けて着工。もうじき完成という頃に、父親が胃ガンで他界してしまいました。美味しいものが好きだったのに、好きなものが食べられずに亡くなってしまった父親への想いと、開店後に糖尿病のご家族を持つお客さんとの出会いなどから、闘病中の方でも食べられるパンを目指すことに。以後、無添加や良質の食材というのは大前提で、目下、糖尿病や腎臓に悩みを持つ方でも食べられるパンを思案、開発中。病気と食事制限については医学的な見解も様々にあったりするため、様々な意見を聞いて悩み、迷う様子は大変そうにも感じられます。また、店内に添加物に対しての断りとして、「アイテムによっては使わざるを得ない場合」が明記されているのですが、これが闘病中の方向けのパンの開発に関わってくる場合も。いざというときには「諦めることも英断」と三田さんは言いつつ、「とことんやってみる」という研究熱心さが勝ってもいるようなので、有効な打開策に近づいて行っているのではないでしょうか。
美味しいパンと、その美味しさを様々な条件下でも味わえるようにと試行錯誤してくれている三田さん — 大田原に住んでいたり、いつでも気軽に通えるエリアの方達が非常に羨ましいのですが、羨むだけでは気持ちがおさまりそうもなく、遠くからでも通って、三田さんが作り出すパンをずっと知っていこうとおもいました。(T.H)
住所/栃木県大田原市大豆田544-4
TEL・FAX/0287-54-4561
営業時間/10:30~19:001
定休日/日曜日、他
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(登録第5290824号)