[木を植える音楽] 記事数:12
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2014年11月16日、栃木県宇都宮市にある石蔵のダンススタジオ「be off」。夜の冷え込みも増し、星空も一段ときらめくこの夜「木を植える音楽CD発売記念party」が開催されました。会場時間の18時を回り、次から次へと訪れる来場者。そんなたくさんのゲストを、会場入り口で静かに迎え入れる小さな1本のクロマツ。そして、会場を流れるあたたかな音楽。それがこの物語の一つのかたち、新しい物語の始まりとなりました。
―2011年3月11日、東日本大震災。未曾有の大震災と呼ばれたあの日から3年。今もなお、私たちの心に刻まれた大きな傷跡は決して癒えることはありません。何度も繰り返された強い揺れ、押し寄せる大津波は多くの人命だけでなく、環境や自然をも一瞬にして奪い去ってしまいました。
福島県いわき市・四倉から沼の内の海岸沿いにかけて、その地域で暮らす人々を守り続けてきたクロマツの海岸林もその一つ。1.4haもの面積が深刻な被害を受け、再生には14,000本の苗木を必要としています。現在、たくさんの団体やボランティアの手によってクロマツ再生へ向けての取り組み、支援が行われていますが、益子町を拠点とする「NPO法人 トチギ環境未来基地」でも、「苗木forいわき」という再生プロジェクトにより2年前から、海岸林の整備や苗木の育成、植林とさまざまに被害の大きかったいわき市のクロマツの再生活動を行っています。
未来へつなげていきたい自然、環境、私たちの暮らし。もう一度、あの風景を取り戻すためにと立ち上がったのが、宇都宮市で「2tree cafe」という小さなカフェを営むオーナー倉本祐樹さんをはじめとする「木を植える音楽プロジェクト」のメンバーたち。「木を植える」というテーマにそれぞれに想いを寄せて、計11組のアーティストが楽曲を書き下ろし、やっとの思いで出来上がった音楽のかたち、それが「木を植える音楽」でした。このCDを1枚販売するたびに、10本のクロマツの苗木がいわき市の海岸に植えられ、育てられることになったのです。「木を植える音楽プロジェクト」と「トチギ環境未来基地」が手を結び、スタッフやボランティア、クロマツパートナーなど多くのサポーターたちの協力の下、今まさに未来に向けて動き出しました。
「自分たちが自分たちらしく、自分たちでできること」。そんなささやかな想いから誕生した「木を植える音楽」。倉本さんの発案から幾度のアクシデントを乗り越えながらも、ようやく完成した11組のアーティストたちの想い溢れる1枚のCD。その発売を記念して開催されたパーティーはこの日を楽しみにしていたファンの方々、CD制作に携わった関係者、「トチギ環境未来基地」のボランティアスタッフ、アーティストたちでにぎわいをみせていました。中央のテーブルに並んでいる料理は彩り豊かに盛り付けられ、どれも美味しそうなものばかり。「木を植える音楽」CDの販売協力店が持ち寄られたという、これらの品々は「シェアする食卓」と題されたもの。発売記念への祝福や再生への願いを分け合おうという想いが、各店のシェフたちの手によってそれぞれの料理として表現されていました。
参加アーティストであり、プロデューサーとしても活躍されたギタリスト・小川倫生さん、ディレクターとしてバックアップした、シンガーソングライター・タエナルさんの司会進行で、各アーティストの生ライブが開始。大谷石の石蔵に鳴り響く、透明感のある心地よいメロディ。会場内では、うっすら瞳を潤ませながら口ずさむ人の姿も。まるで祈りともいえる、安らかな調べにアーティストと観客が心を寄り添う時間が流れていきます。
中盤では、CD制作秘話や「トチギ環境未来基地」による植林活動などプロジェクターを利用して現状のレポートを報告。会場となった「be off」代表の妻木律子さんは、「木」をイメージした素晴らしいダンスパフォーマンスを披露してくださいました。
ライブも終わりが近付き、植樹基金寄贈式では「木を植える音楽プロジェクト」から、この日の時点でのCD売上総数313枚分を「トチギ環境未来基地」に寄贈。倉本さんによってこの売り上げで3,130本の苗木を確保できることが告げられ、鳴りやまぬ拍手と共に「木を植える音楽」のエンディングテーマを会場にいる全ての人たちで合唱。こうして、パーティーは幕を閉じました。
「木を植える音楽が、いつか木を植えた音楽になりますように」
一人のアーティストが口にしたこの言葉。そう、物語はこれからが始まり。倉本さん、そして11組のアーティストたちが奏でる音楽は、けっして終わることなく未来へと鳴り響いていくことでしょう。
私たちの手で、もう一度あの風景を取り戻すために―。(m.m)
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