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[木を植える音楽] 記事数:12

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第8話 「木を植えるうた」オツベル(元みぇれみぇれ)さん

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 彼は「歌」を「おはなし」と、自らを「図書館」という。図書館にあるたくさんの物語を次々と奏で、歌い、そして静かに語り継ぐ彼こそが、空想音楽家・オツベル(元みぇれみぇれ)さん。浮世離れしたその独創的な世界観から生み出された「木を植えるうた」は、彼の空想がつくりだした希望溢れる、とあるひとつの物語。私たちがこれから顔をあげ、前に前にすすむための「活きる力の物語」でした。

 15歳の頃から音楽活動を開始。数々の楽器を巧みに使い、楽曲づくりからレコーディングまで一人でこなしてしまうマルチな才能をもつオツベルさん。「木を植える音楽」プロジェクトに参加することになった「2tree cafe」オーナー・倉本さんとの出逢いは、プロジェクトメンバーである小川倫生さんからの紹介でした。オープンして1年経たない当時の「2tree cafe」では、小川さんがカフェライブを始めたばかり。倉本さんの積極的な誘いもあり、やがてオツベルさんも「2tree cafe」でワンマンライブを行うようになったそうです。
 「ずっと楽曲制作はしていたものの、自分からライブを企画してステージに立つなどの機会は少なかったんです。でも倉本さんとの出逢いがきっかけで、自分の殻を破ることができました。もちろん倉本さんだけでなく、あのお店が好きなお客さんやアーティストの皆さんからの影響もあって、それまで踏みとどまっていた自主イベントの開催やオーガナイズしてのライブスタイルを、少しずつ自分でも形作れるようになれましたね」

 小川さんや倉本さんとの出逢いを経て、幅広い音楽活動ができるようになった矢先に起きた東日本大震災。震災後、オツベルさんは様々な事情でライブがしにくくなった音楽業界の状況に自問自答をしていたと言います。しかし、自分が好きなことや幸せに思える行いがたとえ微力なものだとしても、誰かに安らぎや何かの活力になればと答えを見い出し、「木を植える音楽」プロジェクトに参加することに。こうして、オツベルさんのもつ独特の感性から「木を植えるうた」が誕生しました。
 どこか愉快でリズミカルな「にょきにょき」という言葉。オツベルさんの「木を植えるうた」の歌詞のなかでも、その言葉は特別な存在感を醸し出している印象的なフレーズです。
 「私自身、寂しい曲ばかりで今まで明るい曲をつくった経験がそんなにはありませんでした。だけど今回『木を植える音楽』の制作にあたっては、暗闇のなかにある光のような前向きな一曲にしたいとこの曲をつくりました」
 風景や記憶をイメージさせるものが多いアルバム収録曲のなかで、「木を植える」ということを強く意識したというオツベルさん。「木を植えるうた」は、誰もが抱えている「負」の部分を「木を植える」ことで、少しでも前にすすんでいける活力を与えられるようにと思いを込めたそうです。「にょきにょき」という言葉は、初めてこの曲を聞いた人も小さなお子さんでもすぐに口ずさめ、メロディとともに小さな苗木がすくすくと大きくなっていく…そんな明るい未来の風景が一瞬で頭に思い浮かべられる、光輝く言霊となりました。

 最近では、「木を植える音楽」のCDを取り扱いしている郡山のカフェでプロジェクトメンバーと共にミニツアーを実行。今後も機会があれば、県外でのライブを考えているとか。
 「日常だけでなく実際にライブを観に来てくれた皆さんが、この音楽そのものを純粋に楽しんでいる様子を感じることができたことが、私にとって何よりも嬉しかったですね」
 楽しむという気持ちは、明日への活力にとなるもの。オツベルさんの物語は、きっと幸せな最期が迎えられるはずです。小さな苗木を大きく育たせるこの物語をハッピーエンドへと導く、未来へ向けての希望が、私たちの心の中にしっかりと刻まれているのですから。(三上 美保子)



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