「一冊の本で何かが始まるかもしれない、その本との出逢いによってかけられる魔法があるから。そんなきっかけづくりのお手伝いができればいいと思っています。」
そう語るのは<Trunk Books>の名で移動古本屋さんをしている三上美保子さん。三上さんはもともとご夫婦で「ブック・バー」を営んでいました。もうそのお店は閉めてしまったのですが、やっぱり何かやりたいと思い続け、子育てにもちょっと余裕ができてきた一年位前の秋から活動を始めました。店舗を持つのは何かと負担があるし、お客さんを待っているのではなく、自分から足を運ぼうと思い、イベント出店の移動古本屋さん<Trunk Books>をスタートさせたそうです。
「イベントにはあまり本って置いてないですよね。だから本のある風景を作りたかったんです。」確かにイベント・マーケットなどでは、パンや焼き菓子などの食べ物、またはクラフトやアンティークなどの雑貨はあるけど、本というのは意外にも見かけません。けれどあえて本屋に行くよりも、思わぬ所でふと本に出逢う、というのは普段本を読まない人にとっては、本に触れるいいきっかけになるかもしれません。また、本が好きだけど、仕事に忙しくしていて、いつの間にか本から遠ざかった人とか子育て中で本をじっくり読む余裕もないお母さん世代などが、いわゆる「本屋」ではないところで本に出逢えて、また手にしてみる、本に向き合ってみるというきっかけになることもあるでしょう。
イベント出店の際には、そのイベントに合わせた本のセレクトをしているという三上さん。本の種類は基本的に読みやすいものを、そして女の子が好きそうなかわいい感じのイベントならラブリーな雰囲気の本を、夜のイベントには夜に似合う本を…とたくさんの蔵書の中からそのようにセレクトする作業もまた面白いものです。ちょうどお話を伺ったこの日のイベントが『7月の森へ~青い鳥とクローバーを探しに』というタイトルがついたイベントマルシェでした。周りのお店もフレンチアンティーク雑貨や草花のアレンジメントなど、かわいい雰囲気だったので、今日のマルシェに集まる人たちが好みそうな本のセレクト、プラス小物やポストカード、お友達ご夫婦の大豆キャンドルなども一緒に並べてあり、一つのお店としてとても賑やかな仕上がりになっていました。
今までの出店で印象的だったのは、誰かのためにプレゼントで本を選んでいるお客様がいたこと。「誰かを想ってここで本を選んでくれるのは嬉しい。」また、ここにある本と出逢って、「わあっ」と喜んだ一瞬の顔が見られることも嬉しいと語ります。
三上さんが本好きの旦那様と出逢ったのも、実は一冊の本がきっかけ。「いろいろあって今こうして私が移動古本屋をしているのも、やっぱり本があってこそ。たった一冊の本で、人生が変わるという不思議なことを身をもって体験してるから、多くの方に本との出逢いを大切にしてもらいたいと思うのです。」シェフがお客さんのために美味しい料理を作りたいと思うのと同じように、良い一冊の本を多くの人に届けたいと純粋に思うという三上さんは、また、あの古いトランクにたくさんの本を詰めて、どこかの町で素敵な本との出逢いを届けに行くのでしょう。(eMi.S)
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