栃木県黒磯駅のほど近く、森が深くなった街道を入り、小さな小道を歩いて行くと、そこには幻想的な森と共存するように真っ白な建物が佇み凛とした世界が広がっています。
開かれた森には「オープンプレイス」、「キッチンプレイス」という2つの「場」があります。「オープンプレイス」は、高い天井から光のさす教会のような空間で展覧会やワークショップを展開、「キッチンプレイス」は、森に集う方々の心とお腹を満たすキッチン&カフェになっています。
「森をひらくこと、T.O.D.A.」。メッセージ性のあるネーミングに興味を惹かれ、代表の戸田さんにお話を伺いました。
栃木県那須塩原市の戸田地区。戸田さんのご先祖が明治時代に開いた森は、人々の雇用や新たな産業につながり豊かに発展していきましたが、戦後、燃料資源が化石燃料へと移るとともに森が荒れ果てていきました。
戸田さんが東京から那須に戻ってきた時、美しかった森は荒れ、手入れがされていない鬱蒼とした森になっていたそうです。戸田さんの元へゴルフ場やリゾート開発などの話を持ちかけられたこともあったと言います。しかし、戸田さんは、木を切り倒し人工的に森を切り拓くようなやり方には反対でした。そんな時、信念を持ちながら、さまざまな活動や学習を通して森と人との共存の仕方を模索していた戸田さんに、心と森が開かれる大きな出会いが訪れました。
アーティストの豊嶋秀樹さんが那須の空間を使い、インスタレーションを行う場所を探しており、戸田さんが所有していた空家を提供することになったのです。『森と共存しながら自然を活かし人や芸術、地域が行き交う場所を作りたい』。そんな思いが一致し、自ら手をかけ、森の手入れをしながら、森と人との距離感を大切にしていく「森をひらくこと、T.O.D.A.」が生まれました。
「木や森の循環に自分の生活を合わせること。森を活用することが、森を守ることになると考えています」。戸田さんの言葉は、とても穏やかな中にも力強さを感じます。そんな温かな思いを知ることで、T.O.D.A.の建物が森の中でやさしい表情を見せ、自然に溶け合い調和している理由がわかるような気がします。
「キッチンプレイス」のカウンターの小窓から見える森の表情は、窓によって異なり、フレームの中の絵画のようにも見えてきます。「森の中に住まう人の感覚で、食のことも大切にしていこうと思います」と戸田さん。そんな思いから、無農薬で、季節やその土地の素材を大切にしたメニューを扱います。例えば「森のボウルミール」は、たっぷりの野菜と穀物をひとつにした滋味深い一品。大切に味わいたくなるおいしさです。食べるにしたがい変わっていく味と、窓辺から見えるその日その時に見せる景色の変化を感じることで、森と自己とが一体になるような心地よさを覚えます。
森と共存しながら生活し、森の中のさまざまな「コト、モノ、ヒト、」が集まりながら森を守り、楽しむ提案を続ける戸田さん。『オープンプレイス』も『キッチンプレイス』も、「森と共に生きる」という根っこで全てがつながりあい、そっと開かれ、森とともに大きく成長しています。
戸田さんの力強く、そして人を包み込むような温かな雰囲気は、まるで森のように、訪れる方々に癒しとたくさんの気づきを与えてくれることでしょう。(K.KOYAMA)
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