「yotacco(よたっこ)」とは、地元の方言でいたずらっ子の意味。上野村に住み、昔ながらの暮らしをする、黒澤恒明さん、美穂さんのユニット名です。無農薬農業に携わり、イベントやガイドツアー、カフェを営業。仕事の少ない地域で、地元の資源を糧に、自分たちの仕事や暮らしを作っているのです。
二人の住む、群馬県の南西端にある上野村は、村全域が山岳地帯に位置する山村集落。山に囲まれ仕事が少ないことや進学の問題などから、若い世代が減り、過疎化が進む地域です。村内に高校が無いため、恒明さんもまた、15歳で村を離れました。
学生生活を終えた恒明さんは、仕事でお金を貯めると夢だった自転車で世界を巡る旅へ。南米やアフリカを中心に、4年間、44か国を旅しました。
「自転車で現地の人々の生活を見ながら旅をすると、日本は経済的に恵まれていますが、そんな地域は世界でもほんの一握りだとわかりますよね。発展途上国と呼ばれる国の人々が農業に携わる姿を見て、これからは日本も、農業をしなければ暮らしてゆけないのでは、と考えるようになりました」
自転車で旅した先で目にしたのは、現地の人々の暮らしぶり。国境を越えても越えても何も変わらず、農業を基本に生活をしている人々の姿が目に焼き付きます。目の当たりにした価値観を揺るがす光景が、今の活動に影響を与えているそうです。
帰国後は上野村へ戻り、村へボランティアとして訪れていた美穂さんと出会い、結婚。同時に「yotacco」を結成。無農薬農業も始め、その頃から収穫した野菜をマルシェで販売しています。
険しい山岳地帯に位置する上野村。地理的にも大規模な農業をすることは難しい地域なので専業農家は少ないのが現状です。黒澤さん夫妻が行う農業も、技術を磨くなどまだまだ改善したい点はあるのだとか。自分たちの暮らしと折り合いがつくように、考えながらやっている、と語ってくれました。
昨年(2013年)からは、築130年ほどの養蚕農家の家屋を改装し「cafe yotacco」を開店しました。自分たちで食べるものを作る、自給自足に近い暮らしをしながら、育てた食材を使ったメニューを展開しています。
「美味しいものを食べられるのも大事にしたいけれど、それだけでは勿体ない。上野村の暮らしを感じられるようにと思っています」との言葉の通り、カフェとしてだけでなく、上野村内外の交流を図るため、不定期でイベントやワークショップなどを企画しています。
「よたっこチルアウトビレッジ」森の中にオープンしたカフェで食事を楽しんだり、ハンモックにゆられたり、ゆるりと過ごす一日。2014年6月には、約3時間森のなかで滞在し、その後は温泉にも入れるツアーを行いました。
「グルメフットパスツアー」フットパスとはイギリス発祥で、古い街並みや自然、風景などを楽しみながら歩ける小径のこと。上野村では村内を巡り村の見どころを発見できるほか、地元の料理名人のお宅へ訪問して、お食事を楽しめる企画にしました。
「よたっこおかいこ音楽会」もとは養蚕農家だった「cafe yotacco」二階の広間で行っています。これまでにバンドネオン、インド音楽、ギターとハンマーダルシマーの演奏会を開催。「村に音楽を楽しめる場所がないので、子どもたちに楽しんで欲しい」と、村の子どもたちは入場無料です。
イベントでカフェのことを知ってくれたお客さんが、遊びに来てくれることもしばしば。ひとつひとつの活動がyotaccoとしての仕事や生活することに繋がっているそうです。
恒明さんが主導で行う野菜作りは、マルシェやカフェで提供するほか、自分たちの食料を作る作業でもあり、カフェ営業をメインで担当する美穂さんもデザインや料理で支えます。
それぞれ違った仕事に見えますが、その全部の仕事が生活に寄り添い、上野村での暮らしの一部になっています。現代では珍しくなった二人の働き方は、仕事と暮らしが寄り添う、昔ながらの自然な生活に思えます。(E.S)
イベント写真提供:yotacco
ホームページ http://yotacco.exblog.jp/
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