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[ゆたりストに学ぼう] 記事数:52

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「その気にさえなれば、世界中を歩くことができる…」
田舎暮らしから生まれた温もりの靴

Forest shoemaker
[栃木県塩谷郡高根沢町石末1939]

Yutarist
松下 宏樹さん・彩さん

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 登山靴にもデザートブーツにもみえるフォルムとデザイン、そして人の温もりさえも感じさせる不思議な靴「Forest shoes」。森の中を歩くときの気持ちになれる靴をコンセプトに、2007年この靴は栃木県高根沢町にある工房で誕生しました。

 「この靴で田んぼの脇道を歩けるなんて、夢の夢でしたね」そう顔を見合わせて微笑む松下さんご夫妻。森や川、のどかな田園風景が広がるこの場所に「Forest shoemaker」の工房があります。カタカタと足踏みミシンの規則正しいリズムと、サクサクと革を裁断する裁ちバサミの音。無駄のない、でもどこか居心地のいいこの工房で、ほんのりと革のにおいに包まれながら、一つ一つの作業を丁寧に行い、お二人は今日も「Forest shoes」を作り上げています。

 いつの日か、もの作りで何かしたいと将来を思い描いていた旦那様の宏樹さん。パスタ屋さんでのアルバイト生活から一転。以前から興味のあった靴の専門学校に入学すると、たちまち靴作りに夢中になってしまったそうです。その後、東京の靴メーカーの設計開発部に勤務。そこで出来上がった靴を手にとった宏樹さんは、一つの疑問を抱くのでした。「誰もがこの靴に合うとは限らないのでは―」
 靴作りにおいて、最もベースとなる木型。その木型ができなければ、誰もが心地よく長く履ける靴は生まれないと考えた宏樹さんは、栃木の義肢装具会社へ転職。会社勤めをしながら、靴作りの原点、木型の勉強を始めます。「独学でしたから…。特殊資材売り場に通っては、樹脂でお互いの足型をとる…そんな毎日でしたね」そう懐かしそうに話す、奥さんの彩さん。長く履くことに必要な素材と、足に馴染む無理のないかたち。ステッチの幅や数、ゴム底や革の厚さ等、細部にわたって自分達の靴への思いをかたちにすべく、試作に試作を重ね、ただひたすら追求する日々が続きました。そして半年後、ついにお二人の靴は、ずっと目標にしていた「八ヶ岳クラフトフェア」の会場で、新たな旅立ちを果たしたのです。

 現在「Forest shoemaker」の靴は試し履きをしてもらい、工房では一人一人に合わせた微調整を出来る限り行なう受注生産型のスタイルで製造・販売をしています。ずっと大事にしてほしいと、ソールの張り替えやメンテナンスも行うご夫妻。「届いた靴の傷み傷み具合から、改良への勉強がまた始まるんです」そう苦笑いをして、宏樹さんは窓際に並べられた靴たちを、優しい眼差しで見つめました。

 川崎出身の宏樹さんと、横浜出身の彩さん。自分達だけで靴を作り、販売するという上で、地方よりも都会暮らしのほうがメリットがあるのではないですか?と尋ねると、お二人は口を揃えてこう語りました。「この場所で暮らし始めて出逢った人達…、親身になってアドバイスをしてくれたカフェのオーナーさんや、自分の子供のようにいつも温かく見守ってくれる大家さん、ご近所の方々。そんな皆さんに支えてもらったから、今の私たちがいるんです。もし、仮にここを越して、どんなに環境の恵まれた街に行ったとしても、私たちは絶対後悔してしまう。あの人たちに会いたいって、きっと思ってしまうでしょうね」
 松下さんご夫妻の靴作りに真摯に向き合うその姿と、周囲の人への感謝の思いにあたたかな気持ちになりながら工房を後にすると、入り口にはご近所の方がお裾わけしてくれた、泥つきの大根がそっと置いてありました。
 温もりある「Forest shoes」の靴は、こんなにも素敵な場所で作られているのです。(m.m)

ホームページ http://www.forestshoes.com/

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