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[ゆたりストに学ぼう] 記事数:52

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漆の採取から制作まで
一貫したものづくり。
大子の漆を介し、
地場産業と文化継承に尽力

WARE WOOD WORK・漆工芸作家
[茨城県常陸大宮市上桧沢2032]

Yutarist
辻 徹さん

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 漆工芸作家の辻徹さんは漆についてこう語ります。「何百年もそびえたっていた木に内在している生命力、そしてその時間、人間の業をしめす手の痕跡。時空を越えてそれらを包みこんでしまう漆という不思議な液体。物事のはじまりをとらえ、形にし、素材の心が十分羽ばたいていくように手助けしていきたい」。岩手県に次ぎ国内第2位の漆生産地である奥久慈地域の大子漆は、透明感とつや、渇きの良さが特徴で、品質は日本一とも評され、国宝の修復作業などに広く使われています。最高級の大子漆の魅力を“ものづくり”を通して伝えていきたいという辻さんの熱い思いが伝わります。

 辻さんのものづくりの基本は、一貫したスタイルにあります。原木の仕入れ、製材、乾燥、木地づくり、木工制作に加え、工房スタッフによる漆の採集や樹液の精製、そして塗り仕上げまでを手がけます。作品づくりは、板を購入して加工するのではなく、丸太の段階で見極めるところから始まります。将来作るものに必要な厚みや木目を探し、ストックしながら制作に生かしています。自分が使いたいものをつくる—。それこそが非常に健康的なものづくりだと考え、曲げたくないこだわりとなっているのです。

 北海道札幌市出身。東京芸術大学大学院漆芸専攻。平成2年美和村工芸ふれあいセンター指導員を経て、平成8年「WARE WOOD WORK」を設立。その後、漆掻き職人の後継者不足解消と伝統ある大子産漆の普及を考え、平成22年大子産漆を使った漆器の新ブランド「八溝塗」を立ち上げました。「最高級の漆の産地でありながら漆器の産地ではなかったため、大子漆は地元でも認知度が低い。漆を介し、地場産業の活性化と伝統文化の継承に努めたい」と。熟練した職人の指導を受けた2人の若手スタッフが6月から10月まで漆掻きの作業をし、その後は辻さんとともに漆器の制作に加わります。生計をたてる職業の基盤づくりに取り組み始めました。

 八溝塗は「奥久慈の最高峰である八溝山を目指したい」という辻さんの思いが込められています。辻さんの作品は、金属の箔を施したり、漆の下に隠れる木の素材感をいかしたりと、凹凸の質感のある素朴な風合いのものが多く、小さな傷が目立ちにくいという実用的な特徴もあります。シンプルでモダンなデザインは、和洋問わず現代のライフスタイルに合わせやすく、漆器の新しい可能性を示す逸品と評されています。2010年6月、漆器を販売する「八溝塗工房 器而庵」(茨城県久慈郡大子町)をオープン。「これを機に大子産漆の魅力を多くの人に知ってもらうとともに、奥久慈地域に多くの若手職人、作家が集まり、地場産業の活性化につながればうれしい」。後世に伝えたい辻さんの思いは未来に向かって進んでいます。(K.K)

ホームページ http://www1.ocn.ne.jp/~ware/

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