水はけの穴が開いていない容器で、元気いっぱいにすくすくと育つグリーン。コーヒー粉の空瓶、ヨーグルトのカップ、卵の殻…カンキチさんは、私たちの日常に溶け込んだ何気ない品々を使って、素敵なグリーンの寄せ植えを作ります。でも、どうしてこんなにカンキチさんの手掛けるグリーンは、生命力に満ち溢れているんだろう…。ふと不思議に思い、彼女のもとを訪ねてみることにしました。
グリーンインテリア作家と様々に活躍するカンキチさんは現在、益子町「JOHNNY’S ART STUDIO」内と宇都宮市「inside▲garage」にて販売・製作を行なっています。その他に植え込みや縫物の教室、自身の作品展、出張ワークショップに地元タウン誌の連載もこなす多忙な毎日。「自分が『こりゃ楽しいっ!』と思える仕事をして、それを伝えているだけ」と、カンキチさんは屈託のない笑顔をみせてくれました。
工房を設けたのは2年前。以前はフラワーディスプレイやメイクプリザーブドの職についていたそうで、もともとお花が好きだったんですね?と、尋ねると「好きじゃないし、興味もなかったよ」と意外な答えが返ってきました。「でもね、人生不思議なもんで、自分にしかできないことがほしいなと思っていたときに、たまたまやり始めたのが植物だったんだ。出逢いのタイミングが合ったんだろうね」
持ち前の柔軟なフットワークで、幅広い活躍をするカンキチさんに、近頃では首都圏中心の雑誌からの取材も増えてきました。「あんな雑誌に載るなんてすごい!」という声もかけられるようになったカンキチさん。「自分のしてることは、別に特別なことでもすごいことでもないのにね。やりたいと思っていることに、自分から飛び込んでいっただけでさ。もちろん、失敗することもあるけど(笑)どちらにしても、まずは行動なんだよね」飾らなくなった自分がいる、かっこつけなくなった自分がいる―。自分らしく、思いのままに作品を発表していくにつれて、カンキチさん自身、そう変わっていったと言います。
そんな自分に与えられた様々な環境や状況のなか、カンキチさんは胸にある思いを抱き始めます。「『ありがとう』や『ごめんなさい』すら言えないような…当たり前のことが当たり前じゃない、常識が常識じゃない時代になったなぁ、なんてね。でもね結局はさ、いい事もわるい事もちゃんと全部受け止めて、言葉や行動で伝えていくだけなんだよね」正しさを口にするって、勇気がいる―。それでもカンキチさんは、人として忘れてはいけない大切なことと、自分だけでなく周りの人も楽しめる空間をしっかり守り続けていくために、揺るぎない思いと共に、凛とした姿勢で前を向き歩いています。何事にも誰にでも、そして何より自分自身に正直に生きている彼女の姿は、眩しいくらいキラキラと輝いていました。
「大丈夫、きっと育つから!もし枯れてしまっても、新しい命をまた分けてあげるよ。さぁ、試してごらん」カンキチさんの言葉を思い出しながら、空瓶のグリーンが大空に向かって力強く育っていく理由が、やっと分かった気がしました。(m.m.)
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