柔らかな感触のヨーグルトをひとすくい。その途端、口の中いっぱいにキリリと爽快なまでのみずみずしさが広がり、次第にフワッとミルキーな余韻に包まれていく・・・。そんな極上ヨーグルトの誕生について知りたくて、石岡市郊外にある牧場を訪ねました。
牧場を経営するのは鈴木昇さん、ともえさんご夫妻。1年中ほとんど休みなしで牛達の世話に追われるご主人に代わって、ともえさんにお話しを伺いました。
「ここで酪農を始めてもう30年以上になります。もともと双方の実家が酪農家同士のお見合い結婚。主人は当時、県の家畜保健衛生所に獣医として勤務していましたが、ふたりでこの牧場を引き継ぎました。私は幼い頃から父の傍らで牛の乳搾りを見ながら育ったので、とにかく牛も酪農も大好き。酪農、というと臭いがキツいとか汚いとか体力的にハードとか、いわゆる3K的なイメージを持つ人が多くて、生協の交流会などでも牧場内に入ることを嫌がるお子さんもいたりします。でも私達の目指す酪農は、ヨーロッパの牧場のようにのんびり豊かで牧歌的なイメージ。白樺を植えてみたり積極的に交流会を受け入れたりして、酪農に対する印象を少しでも変えられたらいいなと思っています」。
そもそも鈴木さんご夫妻が実践している現在の酪農は「牛も人間も健康で豊かに」がモットー。20年前、「健康な牛を育てるには土作りが大切」と説く北海道の酪農コンサルタント・熊谷氏との出会いが、それまでの酪農スタイルを大きく見直すきっかけとなりました。
「酪農を始めて最初の10年間は毎日が牛の病気との闘いでした。日本の酪農は牛を経済動物と捉え、いかに安いコストで1頭の牛から多くの牛乳を採るかということが最優先。でも効率だけを追っていては健康な牛は育たないし、そんな酪農では働き手も疲れきってしまいます。そんな時に熊谷さんと出会い、牛の飼料をイチから見直すことに。草食動物である牛にとって美味しい牧草は何よりのごちそう。化成肥料に頼らずに手作りの堆肥から作った良質の土壌で、牧草やとうもろこしの栽培を始めました。思考錯誤を繰り返し、納得がいくものが出来るまで時間はかかりましたが、それらを食べた牛達は次第に健康を取り戻していきました。効率より牛の健康を優先することで1頭当たりの乳量は減少。でも牛舎に病気の牛がいるという不安から解放されたことは私達家族にとっても大きかったですね」とともえさんは語ります。さらに、牛が健康になることで牛乳の甘さが増すという変化も。「そりゃそうよね。病気がちな牛から採ったお乳よりも、美味しい食事を食べた健康な牛のお乳のほうが美味しいはずよね」とともえさんは笑いますが、土を作りから再スタートした酪農を軌道に乗せるまでのご苦労は並大抵のものではなかったはず。甘いお乳は牛達から鈴木さんご夫妻への恩返しなのかもしれません。
そんな鈴木牧場の牛達の恵みをストレートに味わうことができるのが、限定販売の「鈴木牧場ヨーグルト」。自家用に作っていたものがご近所で評判を呼び、常総生協や地元の農産物直売所の後押しもあって、発売にこぎつけました。
「乳製品の加工は規制が多くて許可をとるのが大変なんです。それでも私達の酪農への姿勢を評価してくださる方々の支えがあって、なんとか発売することができました。原料となる牛乳が違うと加工品の味もこんなに違うということが伝わるといいなと思います」。ヨーグルトが牛乳で出来ているという当たり前のことをしみじみ実感できるフレッシュなヨーグルトは売れ行きも順調。6月からは、ともえさんがヨーロッパを訪れた時からずっと夢見ていたチーズの販売も決まりました。これからますます忙しくなりそうですね、と声をかけると、「今は子供たちやパートさんのおかげで何とかやれていますが、あくまで無理をせず、やれる範囲で続けていけたらいいと思っています。毎日牛と触れ合って肌でコンディションを確認しながら、牛も自分達も心地よく。将来的には頭数を減らして放牧にして、のんびりと生涯現役を続けられたら幸せですね」とともえさん。牛もヒトも健やかにのんびりと…。誰もを虜にするヨーグルトは、そんな鈴木さんご夫妻の伸びやかさと長年の努力が結実した、キラキラと輝く結晶のようなものかもしれません。(森田)
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