「周りの人からよく言われるんですよ。『農業なんて大変だろ、やめとけよ』ってね。でもね、申し訳ないぐらい楽しいんですよ。苦労してるって、思ったことは一度もないんです」真っ直ぐな眼差し、屈託のない笑顔でそう話す「まんまる農園」代表の丸山尚史さん。のどかな田園風景が広がる栃木県真岡市で、有機無農薬栽培による安心安全な野菜作りを実践しています。
丸山さんは東京農業大学を卒業後、青年海外協力隊・野菜隊員として南米エクアドルで2年間活動されました。その時に感じた、豊かな日本の文化を守っていくことの大切さ。そして、先進国の大量消費を支えるため、途上国と言われる国々の環境が破壊され、貧富の格差が拡大しているという現実。丸山さんは、地域内で循環する小さな農業が必要だと考え、有機農業を志したそうです。
奥様と共に二人三脚で取り組んでいる有機無農薬栽培とは、農薬や化学肥料を一切使わずに、堆肥や緑肥で土が本来持っている力を引き出す栽培法。そうして手間暇かけて作られる、美味しさと栄養に満ちた野菜は、地元スーパーや飲食店をはじめ、東京・大阪など都市部を中心に新鮮なまま宅急便で届けられています。
「食・暮らし・文化」だけでなく、「生産者と消費者の関係」も見直していきたいという丸山さん。食べる人の顔を思い浮かべながら心を込めて野菜作りに励む、そんな自分たちの想いを少しでも理解してもらい、またどのように野菜が育てられているのか、実際に見にきてもらいたいと芋掘りなどの収穫イベントも開催。生産者と消費者の結びつきを大切に、今後も様々な企画を考えているようです。
有機無農薬野菜を生産していて、これはもしかして自己満足なことなのか。自分たちに一体何ができるというのか…。農業と、自分たちの生き方に真摯に向き合っているからこそ生まれてくる、悩みや疑問。農業を営むひとりとして、地元農業から日本、世界へと広い視野でこれからどう歩んでいくべきか、試行錯誤の毎日だそうですが、丸山さんご夫妻には「納得した人生を歩んでいる」とはっきり言い切れる輝きがありました。
「楽しくなきゃいけないんですよ。自分たちが農業を楽しんでやっている姿をみて、子供や身近にいる人たちが農業をやってみたいなと思うぐらいにね。私たちはこの広い空の下、土を踏みしめ汗して働いている。そんなふうに、自分が自然の一部なんだって実感できる、農業という生き方の選択に迷いはないんです」
発信する百姓でありたいー。就農して5年目、丸山さんご夫妻が伝えたいことは、「まんまる農園」の野菜にぎっしり込められています。それは体にも地球にもまんまる、味もまんまるな野菜作りは、人と人とを結び、未来へ繋がっていく関係も築いていけるんだということなのかもしれません。
小春日和の休憩時、応援してくれるご家族や研修生と共に、清々しさと充実感に溢れている丸山さんご夫妻の姿が。農園のさつま芋で作られた大学芋を頬張ると、素朴でほっこりとした味わいが、ほんのりと心を温かくしてくれるのでした。(m.m.)
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