JR常陸太田駅から北に向かった坂道を上っていくと、たどり着くのは昔ながらの温かさを感じる街、「鯨ヶ丘商店会」。1.5キロほどの東通りと西通りをメインとした商店会には、個人商店や飲食店が立ち並びます。
現在、その「鯨ヶ丘商店会」を率いている会長が、糀と天然味噌の専門店「喜久屋」の渡辺 彰さん。味噌を作る職人としての仕事の傍ら、商店会の活動にも力を入れています。渡辺さんが店を継いだのは、今から約30年ほど前。その頃は、近くの商店で買いものするのが当たり前の時代でした。しかし今では、買いものというと大型のショッピングセンターへ行く人の方が多くなってしまいました。「でも、商店会には商店会だけの“良さ”があるはず。例えば、買いものしながら話したり、店先から下校途中の子どもたちと挨拶を交わしたり…。『知ってる人がいていいな』って思ってもらえる場所、それが商店会だと思うんです」。
そう渡辺さんが話すように、商店会には人々が集いやすい場所がいくつもあります。例えば、空き店舗を利用した駄菓子屋の「いも屋」。この店舗の奥は、子どもたちの遊び場にもなっています。また、カフェ「結+1」では、有機野菜を使った食事の提供や、子育て中のパパやママを応援するプログラム、絵本の読みきかせなどが開催されています。そのほか、若者の店やチャレンジショップなどもあり、より多くの人にとって楽しめる場所となるよう、商店会のお店ひとつひとつ
が頑張っている様子が伝わってきます。
こうした活気ある商店会を支えているのは、実は「鯨ヶ丘倶楽部」という存在が不可欠。これは、商店会以外から若者や女性を中心に幅広い人々が集まった、言わば“商店会の応援団”です。毎晩のように倶楽部の拠点に訪れては、深夜まで作戦会議や作業を行っているそうです。鯨ヶ丘商店会には「縁(えにし)・よそもの・想い」という3つのキーワードがありますが、鯨ヶ丘倶楽部には、その3つが全て混ざり合い、見えないところで商店会を支えてくれています。
そして、今年から商店会では『和暦(旧暦)』を用いた、ひな祭りや十五夜などのイベントを開催しています。「若い人には新鮮な和暦ですが、もともとは日本に古くから伝わる文化。先人たちの知恵を若い人たちへと伝えることも商店会の役割の一つだと思うのです」。何気ないふれあいから、この街に来たことへの楽しみを感じてもらえれば、『また来たいね』と思ってもらえる場所になる。小さな出会いを日常の中で繰り返していくことで、鯨ヶ丘のファンを増やしていきたい。そ
れが、渡辺さんや商店会、鯨ヶ丘倶楽部に参加する人たちの想いです。
車を降りて小高い丘の上にある商店会をゆっくり歩くと、街そのものを楽しむ暖かい時間を過ごすことが出来そうです。(tou2)
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