笠間市稲田にある「磯蔵酒造」は、明治元年に創業した歴史ある酒蔵です。取り扱っているのは、もちろん代々伝わる日本酒。この老舗の味を、毎年変わることなく造り続けることが蔵主である磯 貴太さんの仕事です。
しかし、最近では若者を中心にお酒を飲む機会が減ってきています。特に、日本酒は“酒の味が分かる人が飲むもの”というイメージもあり、敬遠してしまう人も多いと聞きました。「でも、分かるとか分からないとかいう、大げさなものではないと思うんですよ、日本酒って」と、磯さん。飲む人がその味を好きなら、それ以上、何かを語る必要はない。それに、活きの良い刺身や豆腐、漬け物みたいに昔から日本にある食べものには、やっぱり日本酒が合うのでは…。そう感じた磯さんは、まずは磯蔵の味を知ってもらうきっかけを作ることが大切だと思ったのです。
若い蔵主らしく、磯さんの行動は大胆でした。現在の「磯蔵酒造」という名前も、磯さんが蔵主就任後に変更したもの。実は、この名前は屋号として地元では馴染みのある名前でした。それに合わせて、酒のラベルも一新。飲めない人でも欲しくなるデザインを目指しました。さらに、蔵の情報を載せた新聞も年2回発行し続けています。
そして、直接お客さんと触れあえる移動式の日本酒バー「ちょっ蔵」を考案。日本各地のイベントに設置して、今年も麻布十番納涼祭や笠間の祭などに参加しました。「浴衣と下駄の姿なら升酒を持ってると“粋”な感じがするでしょう?」。和の雰囲気にある風情を感じながらゆっくりとお酒が飲めるのは、日本という国だからこそ。「日本酒っていいね、と思える瞬間が、多くの人の中で増えていくと嬉しいですね」。お酒で世の中が楽しくなるように…。5代目の蔵主となる磯さんの想いは、稲里の地から少しずつ広がっているようです。(tou2)
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