朝食や仕事の合間など、コーヒーは私たちの生活に馴染み深いもののひとつ。今や身近な飲みものと言えますが、その多くはラテンアメリカやカリブ、アフリカといった遠い海の向こうの熱帯地域で生産されています。
水戸市にあるコーヒー自家焙煎の店「コーヒー・ア・ゴー!ゴー!」の店主・片岡雅宏さんが提供しているのは、そんな遠く離れた国々の農園から直接仕入れたコーヒー豆。国内では、問屋を介さずに仕入れをする個人店はほとんどありませんが、片岡さんは「珈琲の味方塾」という生豆を共同購入しているグループの一員です。そこでは、実際に各国の農園とのやり取りを経てコーヒーを仕入れています。
選ぶ基準は、もちろん味。グラスに挽いた粉とお湯を入れ、スプーンでひと口分をすくいます。そして、香り・さわやかさ・後味などの項目に点数を付けて、コーヒーの品質を評価するのです。これは国際基準で決められた審査方法=カッピング(テイスティング)です。そうして、高得点を挙げたスペシャルティコーヒーだけが片岡さんのお店では提供されています。
しかし、片岡さんが考えているのはその先まで。どうすれば美味しいコーヒーを作ってもらえるのか。それには農園で働く人々に頑張ってもらうしかありません。実は、現地の生産者には貧困と向き合っている人も多く、農園のある山から街へと降りてしまう人が続出していました。「せっかく美味しいコーヒーが作れる土壌でも、それを育ててくれる人がいなくては…」。そこで、片岡さんは一部のコーヒー豆に500g 50円、250g25円の寄付を売上の一部に付け、生産者の皆さんの生活向上に充ててもらうことにしたのです。また、「珈琲の味方塾」の他の店舗でも協力し合い、現在は中央アメリカ・エルサルバドルにあるモンテシオン農園で託児所設立や学校へ行く為の奨学金などに使ってもらっています。この試みはお客さんからも支えられ、昨年、1棟目の託児所が完成しました。
自分たちが欲しいからといって、ただ良い豆を求めるだけでなく、そのために出来ることをしていく。こうして生産者との信頼関係が深まっていくからこそ、美味しい豆も育ててもらえるのです。お金さえ出せばいいというのではなく、買付けを行う側と生産者が、お互いに信頼し合う関係を作っていくことも大切なこと。「もっと多くのお客さんにスペシャルティコーヒーを知ってもらいたい!」という片岡さんの気持ちが、地道ではあるもののグローバルな活動へと広がっています。(tou2)
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)