カンカンカンカンッ…。ガランとした工房に、赤くなった鉄をハンマーで叩く音が響きます。熱を加えた金属を一つずつ成形する“鍛冶”は、工業製品が多い現在ではそう多くは見られない技術です。工房を主催する宇田さんは、室内外の装飾や看板、オブジェなど、オリジナルの作品を製作する鍛冶職人です。
日本では、古くから刀や農具といった道具を製作することが多い鍛冶ですが、西欧では室内外の装飾に用いられることが多く、より生活に密着した存在になっています。中でも、職業にマイスターという制度があるドイツでは、各工房の技術が高くモダンなデザインが多いと言います。「私自身も、ドイツの工房で3年間職人として働いていました。工房だけでなく、建築物や看板など、街にはたくさんの鍛冶で作られた作品があり、とても勉強になりました」。その後、2002年に帰国し、日立市十王に自分の工房を開きました。
現在は、階段の手すりや門扉、庭用のローズアーチなどの装飾などを製作する機会が多いそうです。「ドイツで修行したせいか、洋風なデザインと思われていますが、こうした作品は日本家屋にも合うスタイルがあると思うんです。ローマ字だけでなく漢字での表現も出来るし、“和”の中にも、モダンなデザインで鍛冶を取り入れていきたいですね」。鍛冶という昔からある技術で現代に何を残すことができるのか。宇田さんの作品には、そんな思いも込められています。(tou2)
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