[ゆたりストに学ぼう] 記事数:52
< 次の記事 |
かわいいワゴン車と雨よけのテントが火曜日を除く毎日、水戸市内やその周辺でさわやかな風を受けています。そこが渡辺さんのお茶を味わうことができる”お店”です。
「出張お茶サービス社」と聞くと、オフィスなどへのデリバリーサービスを連想しそうですが、渡辺さんのお店はあくまで、お客さんが足を運ばなければいけない形態。「日曜日はイベントなどの出張出店。月曜日と水、木、金、土曜日はあらかじめ契約してある場所で店を開きます」と、定位置でのお茶サービスを展開しています。
渡辺さんのお茶への目覚めは、幼いころから。おじいちゃん、おばあちゃん子だったという渡辺さんは「お茶を飲みながら、時代劇を見るのが楽しみ」な、ちょっぴりませた子供の体験からでした。そのころからお茶との人生がスタート。中学生、高校生と大人に近づくに連れ、紅茶、中国茶などを独自に研究。どんどんとお茶の魅力の底なし沼へと足を踏み入れていきました。
大学を卒業後、水戸芸術館スタッフとして水戸で働きましたが、お茶への未練は捨てきれず、自分の店を開店。やがて、固定された店から移動できる店へと形を変えて、現在のスタイルに落ち着いたそうです。この店でお茶を提供するほか、お茶の入れ方の講師として招かれたり、イベントに呼ばれたり、店ごと気軽に参加できるのが、渡辺さんの強み。
「お店のような決まった空間ではなく、外でお茶を飲むことで、ゆったりとした時間の流れが感じられるはずです。お茶を飲むことは日常ですが、ここで非日常を味わえる。リセット感、リフレッシュ効果が確かめられるはずです」と、渡辺さんは語ります。
テントの前を行き交う車や自転車、人。それらを眺めながらお茶を飲んでいると学校帰りの子供たち店の中を冷やかしていきます。飄然として穏やかな表情の渡辺さんの風貌は、子供たちにも安心感を与えているのでしょう。テイクアウトを頼む主婦も、しばらく話し込んでいきます。
茶葉を買い付けに海外にも出かける渡辺さんですが、年に1か月ほどは水戸を離れて、「お茶道楽」と題した旅に出ます。昨年は広島へ、ことしは東北6県を巡りました。「道の駅などでお茶の店を開きながら行脚します。寝泊りは車の中でできます。水戸だけじゃなく、多くの人の反応が感じられます」と、行く先々でお茶のサービスを展開。「水戸よりも地方の方が反応の良いところもあります」と、武者修行の成果は上々のようです。来年は「四国を目指します」と、移動できる店の機動力を十二分に発揮しています。
最近はハーブティーの人気が高く、女性たちの相談が多く寄せられます。「ハーブはその人のその日の体調や気分によって入れ方を変えます。いろんな状況でもいかにおいしく入れるかがポイント」と渡辺さん。
将来の夢は「今よりもどれだけお茶を良く入れられるか。それと、地元愛というか、最近元気のない水戸の街の活性化のためにお役に立てることができれば」と力みのない姿に秘めた強い意志も感じられます。時代の風に逆らわす、ひょうひょうと自分のスタイルを貫いていく渡辺さん。ほのかなお茶の香りのように、人生に深い味わいを加えているようです。(前田)
[ゆたりストに学ぼう] 記事数:52
< 次の記事 |
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)