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[地方に暮らす。[八郷編]] 記事数:7

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|第一話|水車でつくる水車杉線香(後編)

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地域のつながり


 駒村清明堂のお線香は、現在、駒村さん、奥さん、おばあちゃん、駒村さんのいとこの4人で作られています。かつて、冬の間の農閑期には、山のなかに小屋を建てて、そこで暮らしながら山から杉の葉をとる仕事、馬車でそれをおろす仕事などを、近隣の農家のひとにお願いしていたこともあったといいます。しかし戦後、オリンピックも終わって、車をもてるようになってくると、荷が積めるし、ひとにお願いすることも少なってきました。しかし今でも、繁忙期には、お線香の束をまとめたりという作業の手伝いを頼むこともあるそう。
 自分たちだけじゃできない。やっぱり地域のひとたちにも手伝ってもらわないとできないこともあるんだよ。とお線香づくりを通した、人とのつながりを教えてくれました。
 そして、そこに暮らすことで生まれ、育つ地域のつながり。駒村さんと奥さんの出会いも、青年団。当時、奥さんは隣町の青年団にいたそうで、そのころは、近隣の町の青年団の交流が盛んだったのだそう。
 お嫁に来た駒村さんの奥さんが、そんなつながりの中で暮らし、大切にしていること、伝えていきたいこととは?





そのひとに応じた出番を、作れたらなと思うの


 「仕事をしている家に、嫁に来るっていうことは、やっぱり甘いだけじゃだめ。覚悟も必要。でも近所の人に恵まれて、道具を作ってくれるひとに恵まれて、ひととのつながりは本当に大切だと思った。嫁に来てから、変わらず続いている地域のおかあさんたちの集まりもあるのよ。だいぶ年齢層は上になっちゃってるけど。集まって、一緒にごはんを食べるだけっちゃ、だけだけなんだけど。こういう集まりはやめることは簡単なのよ。すっごく。でも、やめちゃうことで、隣のひとと話す機会がなくなっちゃうと、また何かを始めようとするときに、声もかけられなくなっちゃうの。内容はともかく、集まることに意味があると思う。
 ここらへんは、昔から付き合いのある地域のひとばかりじゃなくて、新しく入ってきたひとたちもね、少しだけどいるの。ちょっとしたつながりでいいと思うの。ごみ出しのときにちょっと声をかけるとかね、「この間、おかあさん風邪気味っていっていたけど、どうした?」とか。
 子育てが終わってしまうと地域とつながるきっかけがなくなってしまうことがあるから。地域の中で、その人に応じた出番をつくってあげる機会ってとても大切。一人ひとり、楽しみは違うけど、地域の中で地域の人と暮らせることは、とっても幸せなことだと思うの。」






最後に


よりよいものを作るために


 駒村さんの仕事は、自立している。
お線香の材料は、近隣の山から、自分でとってくる。お線香を作る工程の主な動力は、水車で、家の裏を流れている沢から水をひいている。水車をまわすのに、すこし拝借そしたら、またもとの流れに、戻していく。水車でひいた葉の粉を練るのに必要な、お湯は、かまどで杉の枝を燃やして、沸かす。
 そして、それを電動のプレス機にかけ素麺状の線香をだし、室内で乾燥させる。よいものは変わらない。と同時に、よりよいものにしていくために変えてきたものもある。昔からのやり方を守るために、かたくなに守り続けるのではなく、よいものを作るために守るべきもの、変えていくものに向き合いながら、駒村さんは、お線香を作り続けている。(Maki Takahashi)


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