[ましこのうつわ] 記事数:7
1-5 | 6-7 >
写真提供/上野仁史
佐藤さんの器を初めて手にしたのは、益子の「STARNET」でのこと。ミニマムにそぎ落とされた静かな空間。そこに並べられた作家の名前を出さない器たち。凛とした店内の空気に少し緊張しながら眺めた棚に、やわらかい黄白色の器がありました。飯碗を手に取ると、手のひらにしっくりと収まり、ほのかにかさかさとした表面が温もりをたたえているよう。家に持ち帰って日々使っているその器は8年ほどを経過した今、粉引の黄色に深みが増し、愛着を感じさせてくれます。
益子には2018年現在およそ250軒の窯元があります。それぞれ歴史と伝統を受け継ぐなかの一軒が「えのきだ窯」です。現在、五代目の榎田智さん若葉さんのお二人が本店を、四代目のご両親がお蕎麦やさんも併設する支店を経営されています。
わたしが焼き締めの器の魅力に気づいたのは、焼き物が好きになって相当時間が経ってからのことだったように思います。自分の中で「渋い」の一言で終わらせていた焼き締め。よく眺めてみると、器の肌は土の色そのままに赤茶だったり、薪窯の中で降ってきた灰を被った部分が灰褐色や深緑の色をみせていたり、見る角度によってさまざま。そしてなにより、炎がゆらゆらと土をなめた跡がはっきり見て取れる不思議さと、その美しさに心をつかまれました。
春と秋の年に二回開催される益子陶器市。城内坂を中心とした街全体に作家がテントを並べ、メインストリートはもちろんのこと路地や脇道をのぞいては素敵な器を見つける楽しみがある数日間です。
その中のじゃりん小路をのぞいたとき、白一色の器の並ぶテントと、そこで店番をする猫を目にして吸い込まれたのが石岡で作陶する辻中秀夫さんのブースでした。
器の底に光るきらきら星。そこをめがけてゆっくりと流れ止まった釉薬が、星空を囲む森を思わせます。細やかに施された象嵌の星空を作ったのは西丸太郎さん。白地に彩りも美しいオカメインコ・クリオネなどのモチーフが楽しげに踊るデザートカップの作者は下永久美子さん。心楽しくなる器を作るご夫妻に会いに、益子に出かけました。
陶芸家の工房にお邪魔するとき、それはたいてい静かな山奥に分け入った場所にあり、道に迷いながらたどり着くことが多いのですが、お二人が暮らす住居兼工房は車通りの多い道路に面していました。以前はお好み焼き屋だった建物にお住まいだとは伺っていたのですが、玄関前に本当に「お好み焼き」という看板が立つ建物。がらがらと引き戸を開けると営業していたときそのままのカウンターに小上がりが目に入ります。そのカウンターの内側に、厨房・シャワールーム・そして電気窯が!
[ましこのうつわ] 記事数:7
1-5 | 6-7 >
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)