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「ジブンらしくツナガルくらし」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ01 地方とわたしとつながる世界」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[地方に暮らす。[里美編]] 記事数:8

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|第四話|ついて行きたくなる背中

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 今回お話してくれたのは生粋の“里美人”鈴木敏一さん(63)です。第1話で紹介した岡崎さんがご自身のことを“水の人”と表現されていましたが、敏一さんはまさに“土の人”です。いつもニコニコ柔らかい笑顔で気さくな敏一さんですが、地域のために様々な活動をされており、そこには地域への強い愛情が感じられます。



里美生まれ、里美育ち

 里美中学校を昭和41年に卒業(3回生)し、その後日立市の家電屋の太田営業所に就職されました。「初めの頃は里美からバスで通ってたんだ。定期も3か月分なんて買えないから1か月ずつ買っていて、その時の定期代覚えてるよ。1か月4620円だった」と敏一さん。私が「よく覚えていますね」と驚きの表情を見せると「覚えてるよ。だって会社からは交通費が1500円しか貰えなくて残りは自分の給料から払ってたんだもん」と笑って話してくれました。6年半勤務したのち退社、昭和48年10月には電気工事店に転職され約3年勤務されました。そこでは主に原子力関連施設の電気設備工事をしていたそうです。その後、昭和53年5月6日に鈴木電気工事店を1人で開業しました。当時は周りでも起業する友人も多く、電気工事店に勤めたのも起業するための修業と考えていたそうです。約30年間個人として電気工事店を続け平成20年に法人化して株式会社鈴電を設立されました。




活発な地域活動

 私たちが敏一さんと出会ったのは平成23年6月に行なわれた市文化課のエコミュージアム活動の会議が上深荻大菅町会で行われた時で、敏一さんは副町会長を務めていました。上深荻大菅町会は当時の町会長を中心にとてもまとまりのある地域で、赴任したばかりでまだ何も分からない私たちに地域の案内をしてくれました。それ以来様々なイベントにも声を掛けていただいており、深い関わりがあります。
 同町会は平成21年度からエコミュージアム活動に取り組んでおり地域資源探索、MAP作成、行動計画の発表会も行なってきました。それらを活用してハイキングコースの設定を行ない、地域外から訪れた人にも地域の魅力に触れてもらう工夫をしています。
 平成24年の夏には地域資源を巡るオリエンテーリング「WAO!夏の大冒険」というイベントを地域内外の親子対象に初めて開催しました。各地域資源にはクイズが用意されており、子どもたちはクイズに答えながら地域の魅力に触れていきます。ゴールしたあとは地域のお母さんたちが愛情込めて作ってくれたおにぎりや流しそうめん、かき氷などが振る舞われ地域の温かさにも触れることが出来ます。
 このようなイベントをやるのはとても大変なこと。夜に会議を開き、流しそうめんの流し台や器とお箸まで竹を切りだして手作りしています。当日はお母さんたちも朝早くから料理の準備をします。それでも地域の方は子どもたちの笑顔のために手間を惜しまずに丁寧に準備をしています。「WAO!夏の大冒険」は敏一さんが町会長になった平成25年8月にも第2回目が開催され、前回よりも多くの参加者が集まりました。
 すべてボランティアで成り立っているイベントはいわゆる“稼ぎを得るための仕事”とは別の仕事です。地域にはこのような“地域のための仕事”がたくさんあります。敏一さんも「私も副町会長としてずっと関わっていたし、せっかく前町会長が始めてくれたことだから続けたいよね。」と話してくれました。その言葉からは新たに始まった活動を自分の代で終わらせたくない、引き継いでいこうという“地域のための仕事”への責任感のようなものを感じられました。






1000円でお酒を飲むから阡縁会(せんえんかい)!?

 敏一さんの所属するもう一つのグループが阡縁会です。毎年秋に行なわれている里美かかし祭では何度もグランプリに輝いています。1000円か1升のお酒(当時約870円)を持ち寄って情報交換をしようと昭和53年に始まったそうです。オヤジギャグのようなネーミングですが、近所のメンバーで集まりお互いの仕事のことなどを話す機会、場所があるのは羨ましく感じます。阡縁会は子ども会の行事など地域行事に積極的に協力をしており、里美かかし祭が昭和63年に始まってからは作品を出展しています。今までは村全体の地域おこしにあまり関心がなかったそうですが、かかし祭をきっかけに全体への協力を意識するようになったそうです。

 かかし製造は毎年1日2時間半~3時間、約25日間かけて行われます。その年に流行したものをテーマに、骨組みを作るところや藁を編むところも全て一から自分たちで作っているのです。こんなに大変な作業を毎年続けているモチベーションもやはり自分たちの地域に対する愛情や責任感なのでしょう。








ルリエの活動の原動力


 インタビューもそろそろ終わりに近づいた時、敏一さんが1枚の紙を渡してくれました。そこに書かれていたのはこれからの里美について。河川敷の乱竹を整備して環境と美観を取り戻したい。川で遊ぶ子どもたちを想像して皆で考え行動したい。そんなことが書かれていました。事前にどんな質問をするかお伝えしていなかったのにこのような資料を用意してくれていたのです。少子化が進みどんどん子どもが減っていく中でも子どもたちの未来のためを想って地域のために様々な活動に取り組まれています。





 私たちが自分たちの地元ではない里美地区にこんなにも愛着を持って活動出来るのも敏一さんのように土地に対する愛情と責任感を持っている“土の人”がいるから。そんな地域の方が近くにいて、熱い想いをお話ししてくれて、一緒に活動してくれる。こんなにも恵まれた環境で活動していたんだと改めて感じました。5年後、10年後、もっと先の未来まで考えて地域のために行動している人が敏一さんをはじめ、里美地区にはたくさんいます。“土の人”たちが創り上げた豊かな土地、風土、温かい人の心、それが私たちの活動の原動力にもなっています。
(Relier里美支部・石川明紗)


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