「ジブンらしくツナガルくらし」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ01 地方とわたしとつながる世界」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。
「子どもの頃、夏休みに福島県伊達市にある父親の実家に行って、いとこたちと遊んだり、桃の出荷の手伝いをするのが楽しみだったんだ。」と里美に移住するきっかけとなった思い出を語ってくれたのは茨城県日立市出身、平成9年に里美地区に移住してきた岡崎靖さん(47)です。
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憧れの里山生活を求めて
日立市に住んでいる頃から何度か里美地区を訪れたことがあり、その雰囲気が楽しい思い出の詰まった伊達市に似ていたため、「いつかこんなところに住みたい。でも、里美地区に知り合いがいるわけでもないし、公開されている不増産物件はないし、住みたいけど住めないだろうな。」と諦めかけていました。しかし、平成8年に団地分譲の募集が始まり、第一期分譲に応募し土地を購入、里美地区での生活を始めました。入居当初は団地にはまだ住宅が少なかったものの、徐々に地元の方たちとの交流も増え、地域の飲み会にも参加するようになりました。お酒が入ると自分たちの地域について熱く語る里美の人たちの姿が印象的でした。日立市に住んでいた頃はこんなにも自分の地域について考えたことがなかったからです。里美に引っ越して来た理由などを話している中で「里美が好きで引っ越して来た人に対してはウェルカムな印象を受けた。当初は里美に暮らすことだけが目的だったので、そこで何をしようとかは考えてなかった。だけど自分にも何か里美の役に立つことは無いかな?」と考えるようになったそうです。
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里美で働く
幼いころからの抱いていた憧れの里山生活を実現させたものの、仕事のため日立市に通う毎日。出張に行ったら2週間近く帰って来られないということも多々あり、次第に「一度生活をリセットしたい。里美地区内で何か仕事が出来ないかな?」と思い始めたそうです。そういった想いが強くなり会社を退職、地区内でアルバイトをしながら生活を続け、それと同時に山の案内やグリーンツーリズムに関わりたいという想いも生まれました。そして、平成11年には縁があって地区内の酒蔵でアルバイトを始め、のちに就職。森林インストラクターの資格も平成14年に取得しました。森林インストラクターとしてはグリーンツーリズムの体験活動講師、日立市水木小学校の受け入れなど子ども向けの活動を多くしていました。
酒蔵が休業となり蔵人の職を離れてのち平成21年から常陸太田市内の醤油醸造会社で働き始め、現在も務めています。里美地区内で生活の糧を得るということは無くなってしまいましたが、休日には畑や田んぼなど里山での暮らしを楽しみながら、落ち葉ネットワーク里美(平成20年~)や市のエコミュージアム推進員(平成19年~)など地域での活動は現在も続けています。
そんな岡崎さんと私たちの出会いは平成23年、私たちが里美地区に赴任した直後に開催した震災復興チャリティーイベント「がんばっぺ里美2011春」でした。「出会い」と言っても関わりはほとんどなく、岡崎さん自身も遠くから様子見をしている感じだったそうです。「地域おこし協力隊自体がよく分からないし、自分には関係無いかなと思っていた。」と話してくれました。お互い存在は何となく認識しているけど、特に関わることがないまま時間が過ぎていましたが、平成24年5月に開催された「いばらき旅のストーリー 旅のCAFE」をきっかけに大きな関わりが生まれました。現在では平成24年6月に発足した「里美の水プロジェクト」(※1)の代表を岡崎さんが務めており、一緒に活動することが増えました。
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移住して以来思い描いていたことが形に…
里美の水プロジェクト発足時のことを振り返りながら岡崎さんは「特に1年目は何か実績をつくらなきゃ!とルリエ3人だけが頑張っているなと思っていたんだ。それではもったいないし、それに対して連携できない地域っておかしいよな?って・・・。逆に受け入れている側もそれを試されているのではないか思った。珈琲の話も唐突だし、水のブランド化という話には疑問があったけど、水が美味しい、綺麗だから守っていきたいという点については自分もお酒づくりに携わっていたからわかるし、お酒もコーヒーも水が味を決める大きな要因になっているのは知っていたのでコーヒーを仲立ちとして里美の水の美味しさや守っていくことの大切さを発信していくことが可能なのではと。外部へのPRも大切だけど内部に向けて里美の水が綺麗だという認識付けをしたいと思った。」と話してくれました。
里美の水プロジェクトでは里美の水で作った「里美珈琲」の企画・販売のほかに親子を対象にした水に関わる体験の企画・実施もしています。この企画は主に森林インストラクターである岡崎さんとジオパークインタープリターの資格を持つメンバーが担当しており、小川にいる生物や水質の調査を通じで里美の水の魅力を伝えています。酒や醤油そして里美の水プロジェクトと“水”との関わりが深い岡崎さんですが、「今後里美でどうありたいですか?」という質問をしたところ「よく地元学ではもともとその地域に住んでいる人を“土の人”、地域に生活基盤を持たずに地域おこしに携わる人を“風の人”というけど、自分はどちらでもない。地元の人間ではないが、去っていくわけでもない。どこからか流れてきてそこに留まって、土に浸み込む“水の人”という生き方があるんじゃないかな、そうありたいと思う。」と話してくれました。
里美の水に深く関わりながらその土地に馴染んで生活している姿はまさに“水の人”としての生き方であると感じました。(Relier里美支部・石川明紗)
(※1)里美の水プロジェクトとは、里美地区の清らかな水を残していくために里美の水のPR活動=伝える、イベント・ワークショップの開催=学ぶ、環境保全活動=育むを継続的に行なう団体です。
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