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「ひとが輝くまちの学校」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ02 ひとが輝くまちの学校」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[地方に暮らす。[ジョウモウ大学編]] 記事数:11

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 私たちは長い間、ジョウモウ大学の授業や活動を間近で見守ってきました。取材を始めた2012年の秋は、ジョウモウ大学開校1周年が過ぎ、コミュニティースペースであるMOTOKONYAを改装してオープンしたばかりのころでした。




街と人と。ジョウモウ大学の役割は

 「群馬に、人が集まることのできるプラットホームをつくろう。街に住む多くの人が関わることのできるしくみを―」 そんな思いから発足したジョウモウ大学は、多くのスタッフに支えられ、開校2年目を迎えました。
 ジョウモウ大学の代名詞である「街の人に出会える授業」も着実に、種類を増やしています。年間を通して彼らの活動を見ていると、街に住む様々な役割を持った人がジョウモウ大学の元へ集まり、交流している様子が見えました。

 取材の中では、ジョウモウ大学の授業やイベントを通じて、ものづくりの達人や、お店の店主という、言うなれば「街の先生」にたくさん出会えました。それは、もう、群馬県中のキーパーソン的存在を集めているといってもいいほど。
 面白い人がいると聞けば、東へ西へ。学長の橋爪さんを始めとするメンバーの面々が、積極的に出かけて行くのだとか。きっと、そんな地道で目立たないそんな活動が、ジョウモウ大学の周囲に張り巡らされた「街と人」を繋ぐネットワークの礎になっているのでしょう。


 そして、MOTOKONYAという場所ができてからは、定期出店のカフェや、群馬で活動する作家さんなどが開くイベントで、ふらりと立ち寄り、ジョウモウ大学を知った方も多いかもしれません。
 この場を借りる店主にとっては、お店を開店するにあたり先だってMOTOKONYAでイベントを開くことができたり、自分のペースでお店を開くことができたりする場所。お店の経営にチャレンジしたい人にも、ちょうど良いようです。
 界隈に新たな人の流れを生み出している、このMOTOKONYA。ジョウモウ大学に興味を持ってくれた人はもちろん、人と人とをつなげる、という役割も担っているのだと感じました。




ソーシャルグッドを、幅広い世代に

 この春から、公共の電波を使った新しい試みが始まりました。地元のラジオ局、FM群馬から毎週火曜日に「ラジコモンズ」というラジオ番組を放送しています。パーソナリティーを務めるのは高崎経済大学教員の友岡邦之さん。
 ジョウモウ大学の授業コーディネーターでもある友岡さんが、群馬をフィールドに活躍しているゲストを招いて、これまでの授業やイベントとは一味違った、群馬でなじみ深い社会貢献の事例を紹介しています。

「ジョウモウ大学が、この先何年も続いていくのも、ある種の成功だと思います。しかし、“雨後の筍”のように、ジョウモウ大学のような組織が、次々と地域に生み出されていったのなら―。それはもっと大きな、社会への貢献になりますよね」

 友岡さんがこう語ってくれたのは、実は、ラジオ番組が始まるずっと前のこと。研究者という視点でもジョウモウ大学に関わりたいと話していた友岡さんに、「この先どんなふうになれば、ジョウモウ大学の試みが成功したと考えますか」という問いかけに対してでした。
 もっとも、ラジオの企画自体は友岡さんではなくメンバーからの発案だったようです。結果的に偶然の賜物だったというのですから驚きですが、例えばこのラジオが土壌の栄養となって“雨後の筍”がにょきにょきと育つのも、そう遠くは無いのかもしれません。




私たちが、豊かさの先に求めるもの

 取材を始めてから一年が過ぎた今、ジョウモウ大学に関わる様々な人の渦は、目には見えないのだけれど、確かにあると感じています。そして、そのようなしくみを今の時代が求めているのだとしたら、それはなぜなのでしょうか。再度、友岡さんにお話しを伺ったとき、その答えがキラリ、と見えました。
 「堅苦しい言い方かもしれませんが、ジョウモウ大学は人が社会化される機関だと思います。私たちは社会のシステムが充実することによって、一人一人が個人の中に埋没してゆきます。例えば、昔だったら、映画は映画館に行かなければ見られなかったのが、今では自分でDVDを借りて自宅で見ればいいというふうに。
 私たちは、快楽を追及しようとすると人に迷惑をかけずに、自分の都合の良い環境でやりたいようにしたいという思いがあります。だから便利になればなるほど、一人で完結できる世界を求めて、個人の中に入っていってしまうんです。
 経済的な豊かさの一方で、他者と公共の空間を作り上げていくための、コミュニケーションのスキルや、他人との共生という意味での社会化が今、薄れています。そういった世の中で、私たちが改めて社会化されるために、ジョウモウ大学を通過してゆくのだと思っています」



 
 ここ数年、テレビや本、インターネットを通じて地域の再生物語を目にする機会が多くなりました。人がいなくなったかつての商店街を、人口減少に悩む山あいの山村を、長年その地に住むお祖父さんお婆さんと、若者たちが一緒になって街を盛り上げるしくみを考える。そんな姿に感動し、改めて故郷の再生を願った方もいたことでしょう。
 今、希薄になった人のつながりをもう一度復活させ、地域を再生しようという試みは、全国に散らばっています。そして、確かに、その風潮を感じます。なぜ今人々の心に、その感情が同時多発的に生まれたのか、それは世代的なものなのか。諸説ありますが、はっきりとしたことは、わかりません。
 —それでも。名誉ではなく、お金でもないものに重きを置く。身近な交流を大事にし、家族や仲間と温かい時間を過ごしたい。小さな授業をきっかけにして、人々の間にそんな気持ちが生まれたら。未来を担う若者や子ども達から、そんな思いが自然に芽生え、次々に開花してゆくとしたら―。それはもう、素敵な未来になる。あなたもそう、思いませんか。
(Eri Suwa/写真協力:Miki Otaka)

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