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「ひとが輝くまちの学校」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ02 ひとが輝くまちの学校」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[地方に暮らす。[ジョウモウ大学編]] 記事数:11

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|第四話|群馬で学ぶ、生きた授業

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 街に住む人が先生となり自らの仕事や得意分野を教えているジョウモウ大学の授業。第四話では、場所もジャンルも違う3つの授業をご紹介いたします。





シールを学ぶ、考える、つくる


 昨年秋に行われた、シール工場を見学し、自分でデザインしたシールをつくってみようという授業。教室となる藤岡市の(有)あぜがみシール印刷には、県内各地から学生が集まりました。
 この会社では、はがしにくい箱の封を一瞬で開けられるシール、ハムやベーコンの結束で使われる裂けやすいシールなど、日常的な作業を簡単にする「便利なシール」を開発、製作しているそうです。代表取締役の畔上さんがその日の先生となり、印刷機の音が響く工場を見学しました。
 シールづくりになると黙々と自分のシールのデザインに励む学生の皆さん。お話を伺うと、ジョウモウ大学の授業をすでに二度、三度と受けている方にも出会えました。リピーターの学生さんに、一人で授業に参加することは心細くありませんか?と質問すると「スタッフさんともお話できるし、新しい経験もできるし、意外と大丈夫ですよ」との答えが。
 ジョウモウ大学では、授業に参加できる学生の選定は抽選で行っているため、申し込んだ授業全てに出席できるわけではありません。しかし、少人数で行う授業ということもあって、先生、学生、スタッフの距離が近く、それぞれが程よく交流できる距離感になっているのかもしれません。
 デザインが完成し、いよいよ印刷へ。印刷機で一色ずつ重ねられる色に学生さん達の「わぁ!」という歓声があがります。自分達のつくったシールが手元に渡ると、出来上がったシールについて嬉しそうに話をする学生さん達の姿がありました。





街歩きで「トマソン」を見つけよう

 富岡の街歩きの授業では、ジョウモウ大学で初めて現役の大学生が先生を勤めました。ジョウモウ大学の開校前から興味を持ち積極的に参加していた、当時高崎経済大学4年生だった、太田君です。
 太田君がつくったこの日の授業は、富岡の街歩きをしながらトマソンを発見し、今までと違った視点で富岡の街を見直そうというもの。まずは、先生による超芸術トマソンについての講義から授業が始まります。「トマソンとは、建物などに付着している無用の長物のことで・・・」。なんでも、元は使っていたのに使えなくなってしまった階段や塞いでしまった門など、理由があってつくられたものの本来の意味が失われてしまった建物のことを指すそう。作家の赤瀬川源平氏が名づけ、元プロ野球選手のゲーリー・トマソン氏に由来しているのだとか。参加している学生さんやスタッフも加え、ときおり笑い声が聞こえる授業でした。
 グループに分かれると、トマソンを探して富岡の街を歩きます。富岡製糸場の操業を受けて明治時代に建てられた古い民家や車が通れないほど細い路地が今も残る富岡の街。土産物店や精肉店などのおやつで空腹を満たしながら、建物の隙間やマンホールにも注意を払います。
 学生さん達が立ち止まっていると、「なにがあるのかしら?」と話しかけられることも。製糸場へ向かう観光客が、集まって何かを探す学生たちに興味を持ったようです。「大人になってから、こんな風に街を歩くことってなかったな」学生の一人からそんな声も聞けました。
 歩き終えた後、学生さん達の意見を集めたトマソンの審査では「使うことのできない4枚のドアが付いた建物」が一位を納めました。今回の授業で気づかされたのは、古い、新しい、きれい、汚い、などという単純な評価では表せない新しい概念のこと。実は太田君はこの授業に「路上観察は地域を救う」という副題をつけていました。
 今回「トマソン」の発見に関わることで富岡の何気ない場所に「愛着」を持つことができました。そして、その体験を仲間と共有しながら楽しさを分かち合うことができたのではないでしょうか。そういった思い入れが地域おこしの第一歩になるのかもしれません。




群馬カレー部INジョウモウ大学

 最後にお邪魔したのは、群馬のカレー好きが集まる「群馬カレー部」によるジョウモウ大学で二度目の授業。高崎市内の建築事務所「SNARK」3Fのオープンキッチンで行われました。
 今回の授業では、mixiで1000人近い会員が集まり県内外のカレーについての情報交換などを行っている「群馬カレー部」部長の斉藤孝さんを迎え、家庭で手に入るものを使って美味しいカレーを作ります。参加した学生も順番に手伝いながら、絶品のカレーを作るコツを習い、学生やスタッフも含め皆で味わう授業でした。
 斉藤さんは10年ほど前に知人につくったカレーの味が評判を呼ぶなどして、現在県内の月刊誌でカレーを紹介する連載を続けています。「群馬に浸透しているうどんやパスタの文化と同じように、専門店の少ないカレーの文化も広めたい」そうです。
 大きな寸胴でみじん切りにした玉ねぎやセロリをハーブと一緒に煮込むと、熱したフライパンで牛肉を炒めます。「ジューッ」ワインを入れると立ち上る湯気。周りでは熱心に材料をメモする人、写真に納める人。キッチンを挟んでカレーについての質問を続けながら、交代で調理を続けます。
「え、これも入れるの?」と声があがったのは、桃の缶詰をピューレにしたものをカレー鍋に加えようというとき。「フルーツの甘みがカレーに合う」そうで、この組み合わせには皆驚いていました。
 この授業の参加者はやはり「美味しいカレーが食べたい!」「覚えたい!」という理由の人がほとんどでした。ある方は、「カレー部の存在は知っていたけれど、集まりに参加したことは無かった」そう。この授業をきっかけに気になっていた人たちに出会え、交流できる機会になったようです。





 3つの授業はどれも工夫に富んでいて、先生やスタッフたちの仲の良さそうな姿も垣間見えます。そして、参加する学生さん達も何かを「教わること」だけに重点を置いているのでは無いのかもしれません。変化に富んだ授業をセッティングすることで多くの人が授業に参加できる機会を増やし、人が出会い交流する場所に発展する様子が見受けられました。
(Eri Suwa)

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