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泉屋東京店のクッキー

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日本で最初に売り出されたクッキー

 少し前の話になりますが、ホワイトデーにクッキーをもらいました。「エミーちゃん、老舗の商品を調べてるんだって?」紺色に浮き輪マーク「泉屋東京店」のクッキーです。「懐かしい!子供の頃よく食べたよ!」「でしょ、これ日本で初めて売られたクッキーなんだよ」持つべき物は友人、最近みんなに聞き回っていたのです。覚えていてくれてありがとう♪ポリポリやりながら、歴史をたどってみました。

 貿易商を営んでいた「泉屋」、創業者である泉伊助・園子夫妻は敬虔なクリスチャンだったそうです。大正の初め、通っていた教会でアメリカ人宣教師に出会います。子供達のために栄養に富んだクッキーなるお菓子を焼いていることを知り、ぜひ自分の息子にも食べさせたいと作り方を習ったのが始まりとか。英語が堪能だった夫は原書のレシピを訳し、クッキー造りは夫婦の共同研究になって行きました。いつしかその味が評判となり、1927年(昭和2年)に自宅に看板をかかげた日本初のクッキー店が誕生しました。

 子供の頃、お客様がお土産にくれたクッキー缶。色とりどりに並ぶそれを「私はこれ!」と、姉と取り合って食べた思い出があります。一番印象に残っていたのは輪っかの形をした「リングターツ」。アンゼリカやカレンズ、レモンピールの粒が宝石のように並んでいます。泉屋のロゴマークの浮き輪は、このリングターツを見た息子が「浮き輪に似てるね」と言ったのが由来。その後夫が他界、母と息子の家族4人で人生を乗り切る支えとしての浮き輪型クッキー、母子それぞれ4色の粒を輪に飾り“どんな困難も人の輪で乗り切ろう”と思いを込めたそうです。「浮輪が人命を救うように、クッキーを通して社会の役に立ちたい」と、クリスチャンである夫人らしい願いとともに、変わらず受け継がれている看板商品なのでした。
 カリッと歯ごたえがあり、でもスッと溶けて消える味わい。子供の頃の記憶そのままの味に、手土産を受け取る母の姿など懐かしく思い出しました。(エミー)


泉屋東京店 [東京都千代田区]

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