おいしい、というよりも
嬉しいのと感謝の気持ちを込めていただく感じ
食べ物の走り~旬~名残のハナシです。
まだ9月も上旬の頃だったでしょうか。魚売り場などにサンマがひょこひょこ顔を出すようになりました。皆が喜び勇んでサンマをどんどんカゴに入れているのを前に、魚売り場担当の方が
「今のサンマは走りですからね、走り。決して旬じゃありません」
と叫んでいました。
はっとしました。
食味だけを重視すると、やっぱり旬が一番その素材にとってのベストという気がします。だけど、ここは日本人。
今の時代になっても、通年手に入る食材ばかりではありませんから、久しぶりに会うその味覚が嬉しくて、走りの時期でもつい買ってしまう、そんなこともあるでしょう。
「待ってた、待ってたよ、君を!」
とでも声をかけたくなる感じ。でも、これはきちんと旬が残っている素材に対してだけ抱く感情でしょう。
今となっては通年手に入る、トマトやたまねぎ、じゃがいも、にんじんなんかに対しては特別な感情はわきません。もちろん、春先のじゃがいもやたまねぎ、トマトに対して心が躍るということはありますが。
そして、走りに対して名残。野菜・果物に関していうと、旬を過ぎて、ベストな食味ではないものも多くなっているものの、
「今を逃したら、また1年待たないと食べられない味なんだなぁ」
と思うと、つい手を伸ばし、そしてしみじみかみしめる、という具合になるのです。
私の場合、今だったらオクラやゴーヤなどの夏野菜の典型の面々でしょうか。または、プラムの類とか。
でも、行くものあれば来るものもあるわけで。
はい、早生みかんです。
しかも、極早生。
生粋のみかん好きの方からしたら邪道なのかもしれませんが、私は早生みかんが一番好きです。皮が真っ青で、甘みよりも酸味が際立っていて、こめかみにちょっと圧力をかける感じの味が。
きゅんとしたすっぱさに心が躍ります。
皮が薄くて、ぺたりと張り付いているところを、ちょっとまじめな顔してわしわしとむいて食べるのです。
こんな具合なので、年が明けた頃の、皮がふかふかしたみかんには興味がないのです。その頃になると、別なかんきつ類に心が奪われるようになるでしょうか。
私の野菜の師は
「早生にうまいもんなし!」
と断言していましたが、みかんに関してだけ言うと、
「みかんは早生に限る!」
と、静かに反撃したくなるのです。
Trackback(0) Comments(2) by 安島夏|2011-09-30 21:09
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