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[まいにちが、記念日] 記事数:575

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こんな本読んだよ#015「食堂かたつむり」

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少し前にこの本が映画化されたことを知り、「なーんだ、つまんない」と思ってしまった、心の狭い私。

お気に入りの本が映画化されると、「やっぱりねー。この話すごくよかったもん♪」などと自分が書いたくらいの勢いで喜んでしまうのに。

春はなんとなくバタバタしていて、ゆっくり本と向き合う生活でなかったけれど。

暑くなってきて、だんだん読書したくなってきた!

私は網戸からのそよそよ吹く夜風の中や、夏の午後の和室でごろごろしながらの読書に至福の喜びを感じる。

 
そう、「読書の夏」なのだ。

 
読書の夏の幕開けにふさわしい一冊。

それが、この「食堂かたつむり」。
 

主人公、倫子が失恋をし、10年ぶりに故郷に戻るところから物語は始まる。

インド人の彼は、家財道具一切を持って去っていき・・・と思ったら、ガスメーターに入れておいたぬか床だけは忘れていったらしい。

ぬか床を抱え、夜行バスで田舎へ戻り、会いたくもない母との再会。そして、母のもとで食堂を開店させる。
 
 
倫子の食堂は、お客さんの要望をじっくり聞いて作り上げる、完全オーダーメイド。

そんなで採算がとれるのか?というつっこみも入れたくなるが、まあフィクションなので(笑)。

 
それに、そんな小さなことに心をとられている暇がないほどの、大きな悲しみが倫子に降りかかってくる。

 
話の中に、「エルメス」という豚が登場する。

ネタバレになってしまうのであまり書きたくないのですが、彼女(エルメス)の存在が話の中でとても重要な存在である。

 
人はなぜ食べずには生きられないのか。

どうして悲しくても明日があるのか。

幸せな時間はたくさんあればあるほど幸せなこと?

目に見える優しさや思いやりだけが、本物なの?
 
たくさんの疑問が沸いてきては悩み、ページをめくるスピードが速くなってくる。

誤解のないように、誠実に生きることが一番確実だと思っていたけれど、

もしかしたら誤解を受けやすい人の方が、案外、思いやりのある人なのかも知れない。

毒舌な人ほど、本当の優しさをもっているのではないかと思う。

倫子の母、ルリコが最後に残したサプライズに思わず涙が出た。

ざぶざぶと顔を洗いながら、「やっぱり夏は読書だよなー」と、さわやかな読後感を味わった。

 
読後、すべてのものがいとおしく思える一冊です。

「食堂かたつむり」
小川 糸・著  ポプラ文庫

 

Trackback(0) Comments(4) by つき|2010-07-03 22:10

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