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[雨は遠いそらの上] 記事数:109

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生瀬の滝

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月居山を下り、生瀬富士が一望できる場所のあたりからだんだんと、袋田の滝の音がきこえてくる。岩にのぼって崖を覗いてみるも、まだ見えない。滝の音が遠くからきこえるというのは、なかなかわくわくするものだ。早足で階段を下りていくと、道が右に曲がっている。それとともに袋田の滝の音が消え、別の方向から別の滝の音がきこえてきた。生瀬の滝だ。

音に誘われるがままさらに道を下りていくと分岐があり、躊躇無く右を選ぶ。ここまで来たからには、生瀬の滝を間近に見てやろうじゃないか。ということで、結構急な斜面をずいずい下っていく。滝の音が大きくなったり小さくなったりして、だんだんと近づいてくる。
やがて川のほとりに着く。川岸には一軒家が建っている。こんなところに建っているなんて、凄く贅沢だなあ。別荘だろうか、それともここで毎日暮らしているのだろうか。
「奥の滝へ」という看板に沿ってまた山に入り、小道を下っていく。しかし細い道で、ところどころ崩れたり凍ったりしている。
先日盛金富士で出会った女性が言っていた「生瀬の滝を撮影していた男性が滑り落ちて亡くなった」という話が頭をよぎる。道を少し踏み外せば下は崖である。凍った部分を下りようと慎重に足場を探していたら、脚ががくがくと笑っている。疲れか、それとも恐怖か。がくがくがく。
道の途中に渡された橋は崩れ、悪路が続く。それでも新しい靴跡は残っている。猛者はいるものだ。それに、生瀬の滝も見えている。なるほど急峻で特異な姿を晒す生瀬富士の下を流れる滝である、不思議な岩肌が水の流れからその妖しいてかりを露出している。これは引き返すわけにいかない。何とか奥まで辿り着きたい。
やっとの思いで滝の下部、川のほとりに着く。なかなかスリリングだった。まだ脚ががくがくしている。とりあえず水とエネルギーを補充してさあ写真を撮るぞー、とカメラを構えた瞬間、ぽつっと雨粒がカメラの上に。うわっ!まさかの雨。とはいっても空はまだ明るく、光も差したりしているのでしばらくはさほど降ってこないだろうと滝の風景を楽しむ。
  
そのうちに身体も冷えてきたことだし、上まで戻ることにする。さっきの小道も、上りならさほどの苦労も無くスイスイ登れて帰りはヨイヨイである。
一軒家の脇の小道から河原に下りると上流の様子がよくわかる。生瀬富士を巻くようにして流れてきた川が月居山とのあいだに流れ込むところで幅を広くし、滝へと落ち込んでいる。その流れはさらに広く浅く岩肌を流れ、最終的にはさらなる傾斜を落ちて袋田の滝を形成しているというわけだ。滝が落ちているあたりまでは、水量が少ないので歩いて見に行くことができる。先ほど下から眺めていた滝を今度は上から見やり、そのごつごつした岩肌を眺めていると突然、大粒の雨がばああっと落ちてきた。
慌ててカメラを抱えて、崖に張り出す格好になっている一軒家の下のスペースに逃げ込む。今度は本格的に降ってきたみたい。両側の山は急斜面、どこにも雨宿りをする場所なんて無いから助かった。すると上から「バンッ」と車のドアが閉まる音が。家の人が帰ってきたのだろうか?気分はすっかり住居侵入罪である。どうしよう…と思っていると、老人の男性が降りて来た。家の方ですか、と訊くと違うという。後から奥さんがゆっくり降りて来る。滝を見物に来たのだとわかって、ほっとする。
   
ご夫婦は県南から来たらしく、毎年こちらのほうに来られているそうだ。農家の方だそうで、昨日まで白菜の仕事をしていてやっと手があいたとのこと。
おじいさんはスイスイと岩の上を歩いて見物している。おばあさんはぼくの隣りで「あんまりきれいじゃないねえ、きれいじゃないねえ」と何回もおっしゃる。そんなことないですよ!まあ、季節が季節だからなあ。それに、このグロテスクですらある岩肌を見ればたしかにそう思っても仕方ないかもしれない。
お二人はこれから竜神峡を見に行くと言ってバンに乗って出発していった。それなりに歩いてやっと辿り着いたのに、車で来られるなんて何だか拍子抜けしてしまう。すぐ近くには国道も走っているし、普通に民家も点在している。滝とはいっても生田の滝みたいに「秘境」といった感じは全然無い。逆にそこがこの滝の面白いところかもしれない。あけっぴろげな豪快さがあり、それでいてあっけない。新緑や紅葉のときにはさぞ美しいだろうな。
しかし、生瀬富士側から徒渉してこちらに来るコースがあるときいたが、斜面は切り立った崖のごとく、取りつく島も無いって感じだ。どこにあるんだろう?何かロープみたいなものも引っかかってはいたものの…。
  
バンを見送ると、さいわい雨もやんだ。ぼくもふたたび山道を登って、今度は袋田の滝をめざす。袋田の滝は超有名で、ぼくがわざわざ紹介するまでもないんだけれど、写真を何枚かご紹介しようと思います。
 
 
*生瀬の滝…袋田の滝のさらに上流にある滝。生瀬富士と月居山が隆起し、その間の谷を流れ落ちているという感じ。この視点で見ると、袋田の滝の傾斜というのはかなりダイナミックだということが実感できる。生瀬富士側からの眺めもぜひ見てみたいと思うのである。
袋田滝展望台に至るつり橋の前に急な鉄階段があるのでそれを上っていくと、まず水平展望台がありそこから生瀬滝の遠景を望める。さらに階段を登ると分岐があり、右に登っていけば月居山、まっすぐ行くと前述した斜面下りとなる。
車で近くまで行く場合、国道118号線を北上しますね。看板に沿って右折すると国道461号線に乗り、さらに進むと左折して袋田の滝ですが、曲がらずに直進、坂を上がって新月居トンネルをくぐります。くぐって少し行くと左に入る細い道があるのでそこをちょっと行けば一軒家があり、滝上部を見ることが出来ます。しかし滝全体を見るとなるとちょっとした危険を伴うので(前述の細い道)、自信のある人以外は避けたほうが無難かと。結構怖かったです。
  
  
  
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» Tags:滝行き,

by 雨|2008-03-11 02:02

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