国道293号線という憂鬱な国道(本当に憂鬱なのは栃木に入ってからだが:個人的に)を西に向かって走ると、栃木との県境1キロほど手前の田畑の中に鳥居が見える。そこから鷲子山へ上がっていく細い道へ入り、山頂部に至ると鷲子山上神社はある。
御祭神が鳥の神様で、その眷属であるフクロウにゆかりの深い神社として境内には所々にフクロウの置物や不苦労の石段(2×96=96の石段。往復すれば貴方も苦労知らずで幸せに!)などがあり、他では見られないユニークな神社だ。
その極めつけが、これだ。
「日本一のフクロウ」。この大フクロウに苦労を運び去ってもらい(不苦労)、多くの幸せを運んできてもらおう。老いるまで幸福な人生を過ごせるよう(福老)、開運福徳を願おう。と案内表示にはある。笑うことなかれ、語呂合わせは日本人の伝統である。
これだけではない、「不苦労御柱」なるものまである。大フクロウの下に立っていて、コンコンコンと叩くと苦労や悩みが叩き出され、それを「大フクロウに運び去ってもらい」、「金運福徳・開運幸福を運んで来てもらうという柱」だそうだ。それで柱の中央部付近は皆に叩かれて抉れてしまっていたのだが、今回行ったときには新しく柱が建て替えられていた。
これだけにはとどまらず、大フクロウを支える四柱を青竜白虎朱雀玄武の四神になぞらえ、「両手を押し当て、除災・八方除けを願う」という柱まである。その願いは大フクロウが運んでくれるそうだ。もう何でも大フクロウ様に運んでもらいましょう。日時指定で。クール便で。
とどめは御祭神と並んで祀られているのが大己貴命と少彦名命で、これは七福神における大黒さまと恵比寿さまに比定できる。もうとにかくめでたい、幸運ぽいものがぎゅっと凝縮されているということで、世俗臭漂うもといフレンドリーな神社なのである。
でも困ったときの神頼みとはよく言ったものか、ロト6が当たったとか仕事がどっさり舞い込んできたとか、有名大学に合格したとか、いろいろと大フクロウ様による福徳幸福が多数報告されているらしい。この世知辛い現代に甘い話はついフラフラと行ってしまう方、「そーだうめえ話があるわけねえ、フクロウ詐欺だべ。フクロウっつえば日本にももう一羽別のがいんべやな。ポッポーちゅう。あれタヌキだったっけか」と頑迷に愚直なまでに拒否なさる方など多数あられましょうが、大事なのは「ゆたかな気持ちで『金運の願い』を心楽しくなされてはいかがでしょうか」(パンフレットより)ということなのである。これぞ日本の誇るべき宗教であろう。大事なのは教義などではなく、ゆたかな気持ち、心構えである。実はそれは、もはや宗教ではないというレベルにまで達しているのだ。矛盾を内包しつつ、たえず引き裂かれつつ進むぼくら。レッツプラシーボレッツプラシーボ。そんな感じで、お困りの諸氏もお困りでない諸氏も、ゆたかな気持ちで参拝されてはいかがか。山域は緑にあふれているので屹度心もリフレッシュされましょう。見晴らしの良い日には屹度富士山が望めましょう(ゆたかな気持ちが持てりゃ最初から苦労しねえんだよ、という怒号が聞こえてきそうですが)。
もうひとつ特記すべきは、境内を茨城と栃木の県境が通っているということ。全国でもふたつしか例がないということである。社務所は栃木側にあるのだが(茨城の社務所は兼務で普段は機能していない)、関係あるのか無いのかわからないけどホームページなどを見るとどうも栃木のほうが力を入れているというか、商売上手のようである。茨城側の奮起巻き返しを期待したい。
*鷲子山上神社(とりのこさんしょうじんじゃ)…地元の大蔵坊宝珠上人が諸国を遍歴中に四国の阿波国で製紙の神に会い、産業の振興のためにこれを勧請、807年に創建する。御祭神は天日鷲命(アメノヒワシノミコト)、相殿に大己貴命・少彦名命。奥山稲荷神社をはじめ境内社多数。天日鷲命はもと阿波国から出た忌部氏の祖神で、製紙をはじめとする産業を司る神。
栃木側からも入れるが道悪し。茨城側は全面舗装なので茨城側から入ったほうが良いですよ。
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好評のうちに終了したNHKドラマ「チェイス~国税査察官~」のエンディングテーマをご紹介します。歌っている菊地成孔さんはこのドラマのすべての楽曲を担当しており、エンディング曲まで歌っています笑。音楽担当がドラマの曲を歌うってことは普通しないんですが(と本人も仰っていますが)、ドラマのテーマにぴったし合っちゃってるんだからしょうがない。これを出しゃばりだとか菊地は自己顕示欲の塊だとか言っても若造の野暮というものでしょう。この憂鬱と官能の響きを是非ゆたりをご覧の貴方にも
Trackback(0) Comments(2) by 雨|2010-05-28 22:10
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