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[雨は遠いそらの上] 記事数:109

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春は憂鬱

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いつの間にか花が咲き、空は明るく霞み、地上には色彩が散りばめられ慌ただしくなってきた。そうか春がやってきたのだ今年も。ようやく寒くて色の無い冬を抜け出したというのに、桜が咲く頃はいつも憂鬱だ。何だかんだと理由をつけて、ぼくは出かける機会を逃してしまう。何をやっても心は落ち着かず、頭がぼんやりしている。そうか春がやってきたのだ…。
 
  

 
 
川の土手に行って菜の花を見てきた。鮮やかな黄色がずっと続いている。堤防の上をのんびり歩いていると、長いこと忘れ去っていたキセルの「春」が鼻歌になる。まるで呪詛のような歌だ。
 



  

少し強い風が吹き、菜の花たちがいっせいに揺れる。心をどこかに置いてきたのだ。風景を撮り、風景を眺め、風景を慈しむ。それは心無きぼくの、何かに対する代替行為なのだ。本当に美しいものをみる激しく波打つ心を失った、抜け殻のようなぼくの口が、春が来たことを告げている。そうだ、春がやってきたのだ、今年も。
 



  
   

 
 
僕らの庭に 花が咲き
春が来たこと 告げている
曇りガラスに へばりついた
得体の知れない 悲しみにも
 
寂しさなら 知っている
それはいつも
 
まるで錆びたナイフが
胸に刺さっているみたい
切り取れればいいのにな
まるで消えない瘤のよう
 
  
キセル「春」
   
  
  
   
   
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Trackback(0) Comments(2) by 雨|2008-04-03 01:01

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