ふたたび竪破山にやって来た。駐車場に着くと、今日も人は来ていないようだ。この間来たとき、針金にくくりつけておいたメモが無くなっている。風で飛ばされたような気配もないし…誰かが取って丸めて捨ててしまったのだろうか?急に山がよそよそしく感じられる。狡猾な罠を隠しているような沈黙が、ぼくを包み込む。
不安を抱えながら、この間は写真を撮りながら時間をかけた登りの道を、急くように進む。とりあえず太刀割石まで直行。そこに無ければ山頂まで行ってみるしかない。山はあいかわらず静かで、ときおり冷たい風が林のあいだを抜けてくる。
やがてブナ林の中に入ると太刀割石はすぐ目の前だ。ベンチを見やると、果たしてそこに三脚は横たわっていた。
うわっ、あった、まじで笑。行儀良くベンチに置かれていたのを見ると、誰かがここに置いてくれたのだと思う。しかるのちにメモを回収したのだろうか…。彼に対する疑いの念は突如消えた。ブナ林は快晴の光で明るく、山は親密さを取り戻した。現金な人間である。
それにしても、親切にも置いてくださった方には本当に感謝。下山したときにお礼のメモをくくりつけてきたが、あらためてこの場を借りてお礼を申し上げます。
今日は太刀割石から山頂ではなく逆方向の「奈々久良の滝」まで下りてみることにした。ブナ林を少し行くとスギの人工林に入る。しばらくはこの無味乾燥な資本主義のような林の中を行く。
やがて分岐の峠に出る。駐車場へ戻る林道と、滝への山道だ。山道を下ってしばらく行くと、ところどころ水が染み出ていて、木の橋も架かっている(壊れているけど)。林が切れ、山を出るあたりでだんだんと水の流れ落ちる音がきこえ、岩崖を薄く伝う滝の姿が眼前に現れた。
奈々久良(ななくら)の滝
何というか、山の中を歩いてきたのでそれなりに秘境的な趣を期待していたんだけど、滝直下に林道が走っていて車で来られそうだし、きれいに整備されているし、テーマパークに作られた人工の滝みたいな雰囲気もあって、なかなかほのぼのした滝である。山の上から水は流れてきているようで、崖の上では植林が施され結構な水勢を保っている。それが岩壁に広く流れ出しているのだった。滝は二段に分かれていて、脇の小道を伝ってすぐそばまで近寄れる。
よく晴れた日にピクニックに来たら気持ち良いだろうなあ。
帰りは下りてきた道を分岐まで戻り、駐車場を目指してまた下っていく。途中いくつか山から水が流れている場所があり、だんだんと下の沢に水がたたえられていく。そうか、竪破山からの水がこうやってどんどん流れて下流まで行くんだなと思うと、これが自然の常とはいえなかなか凄いことだと感心してしまう。
凄くきれいな沢で、水も美しければその造形もいちいち美しい。
写真を撮りながら沢沿いを歩き、いつの間にか駐車場に近づいていた。踏み跡を探しながらがさがさと藪の中を進んでいたら、ちょうどワゴンがやって来て、降りてきた家族連れの人たちが怪訝な顔をしている。そりゃ沢から変なのが出てきたらこういう時代だからなおさら怖いよね。
駐車場前のベンチで昼食を食べはじめた家族の団欒を乱さないように、そおっと車を出し、竪破山を後にした。
↑My三脚には悪いことをしたが、空気公団の「うしろまえ公園」みたいなことになっててちょっと良かった回収ポチッ
Trackback(0) Comments(2) by 雨|2008-03-28 00:12
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