ご利用規約プライバシーポリシー運営会社お問い合わせサイトマップRSS

[雨は遠いそらの上] 記事数:109

< 次の記事 | 前の記事 >

竪破山に登る

このエントリーをはてなブックマークに追加

竪破山の登山道に至るには、すれ違えないほど狭い砂利道をごんごん揺れながら行かなければならないのだけど、駐車スペースに着くと整備されたトイレが待ってくれている(さすが茨城百景だ)。トイレの脇には清流が流れていて、本当にきれいな水が山を下ってくるのだ。透きとおった水に見とれていたら、胸ポケットから携帯を落としてしまった。

底に堆積した砂が、きらめく水面にゆれている。とてもきれいだ。その底に、あわれぼくの携帯。
「わあっ、わわあっ」と叫びながら慌てて手をつっこむ。水があまりにきれいなので底がすぐそこに見えるのだが、実際にはずっと深いのだった。シャツの右袖をしとどに濡らしてしまった。急いで携帯を確認すると、とりあえず動作に支障は無いみたい。

全体を拭いて、電池を抜いて、しばらく乾かすことにした。だから登山開始時刻がわからない。まあ、いいか…。水があまりにもきれいなので水没しても壊れないのだろう。などと勝手に納得し、バッグを背負い三脚を片手に(渓流なんかがあった場合には必須)杉林のあいだの薄暗い登山道を登りはじめる。人は誰もいない。すごく静かだ。
  
この登山道は山頂の途中にある黒前神社の参詣道でもある。ぼくはかねてよりこの山に登ってみたかったのだが、理由のひとつは黒前神社参拝、もうひとつはこの山には奇岩がたくさんあり、ぜひ見てみたかった。山頂までは1時間もかからずいたるところにベンチが設置されていて、水飲み場もある。気軽なハイキング気分で登れ、しかも奇岩・巨岩がごろごろしたスピリチュアル・スポットでもあるのだ。
  
 
*不動石
登りはじめて10分もしないうちに出会う最初の奇岩。木立のなかに横たわっている。非常にでかい。のぺっ、としたナマコみたいな一枚岩から水が樋をつたって流れ、岩の表面に染み渡っている。

 
*烏帽子石
「七奇石」のひとつ。不動石から5分ほど登れば現れる。この地を参拝に訪れた八幡太郎義家の被っていた烏帽子に似ていることから名前がつけられたそう。こちらも非常にでかい。


 
*手形石
右手の5本指が深くえぐれているような跡がある。八幡太郎義家が石を押したときについたといわれている。よくわからなかった。


 
*畳石
「七奇石」のひとつ。八幡太郎義家が腰を下ろして休んだといわれている。畳が重なったように岩にひびが入っている。

これこそ奇岩といった感じで、不思議な雰囲気をかもし出している。


 
*炭焼き窯
昭和25年(1950)頃まで使われていたという炭焼き窯。これ、家の近くにあって数年前まで使われていたので、こんな貴重なものだとは知らなかったなあ。中はからっぽ。


 
*弁天池
ひっそりと湧き出る弁天池は、その上部のブナ原生林が水源といわれる。池の中はちょっと澱んでいた。


*太刀割石
「七奇石」の代表的存在。ワグナスのようなものである。八幡太郎義家(頻出の彼は奥州征伐の折にこの地に寄ったのでした)が竪破山で野宿していると、夢の中に黒坂命があらわれ大太刀を差し出した。目覚めた義家が大太刀を一振りすると巨石が真っ二つに割れたといわれている。
これは非常にでかい。本当に真っ二つに割れている。これは人為的なものではないのか?自然に割れたのだとしたら、凄いことだ。それにしてもでっかい。
この異様で居様な巨石に感銘を受けた光圀翁が「太刀割の石」と名づけ、これが「竪破山」の名前の由来になったといわれている。
 
*甲石
「七奇石」のひとつ。大きな丸い石がでん、と鎮座している。中がくりぬかれ祠になっており、薬師如来の十二神将像がまつられている。


 
*舟石
「七奇石」のひとつ。甲石の前に半分埋まったような格好で横たわっている。舟のようなかたちをしている。


 
*黒前神社
甲石と舟石がある広場に薬師釈迦堂もあり、そこから急な石段を登ると神社がある。拝殿前は狭く、下は崖だ。神社前を通り過ぎさらに奥に行くと山頂である。祀られている黒坂命は、賊の城を茨で囲んで攻め滅ぼしたことから、「茨城」の名の由来となった神として有名。二度目にこの山に来たときに病死したことから、この神社に祀られている。


 
*胎内石
「七奇石」であるとか無いとか。山頂を通り過ぎ少し下る。崖に巨石群が積み重なっており、奇岩の中でももっとも規模が大きい。その昔旅に疲れた黒坂命が馬に乗った童子に助けられ、この中で休んだとされている。この石の近くにかなり巨大な杉の木が立っていて、息をのまざるを得ない。




 
*神楽石(七奇石)、軍配石
未確認。
 
*奈々久良滝、剣滝、龍馬滝
未確認。奈々久良滝へは1.5キロほど歩けば見に行けるようだ。駐車場からも砂利道が続いていて、車で登っていける。今日は時間が無かったので見には行けなかった。
  
*仁王門(随神門)
三の鳥居とともに黒前神社入り口を形成する。神仏混交のあとが色濃く残る遺構だが、つい最近建て替えられたようなのだ。新しい木の香りがぷんとしていた。
  
  
山頂には展望台があって、高鈴山や真弓山、神峰山などの展望が得られる。日光や那須連峰も眺めることができるらしい。晴れてはいるが空気が霞んでよく見えないのが残念だ。


黒前神社で拍手を打ったら、特に汚れているわけでもないのに手から埃が舞った。あれ?と思ったら、花粉なのだった。まあこれだけ杉林に囲まれていたら、凄い量の花粉が飛ぶのだろう。花粉症でなくて本当に良かった。
 
駐車場に戻ってさあ帰ろう、と思ったら、手もとにあるはずのものが無いことに気づいた。何と三脚をどこかに置いてきてしまった!
「ああっ、あやーっ!」と叫んでもしかたない。もう山は下ってきてしまった。今から取りに行くには時間も無いし、だいいちしんどい。
太刀割石の前のベンチで荷を下ろして少し休憩したので、あのあたりで忘れてきてしまったのだろうか…。
「見つけたらお手数ですがふもとまで持ってきていただくか、良かったら持ち帰ってお使いください」と紙に書いておいたのだけど、見つけた方はそのままにしといていただけないでしょうか。あとで回収に行きたいと思います。
三脚は手に持っているだけで結局使わなかったし、バッグに突っ込んでおけばよかったものを…。まったく何をやっているのだおれは。
 
竪破山までの里山の風景は、素朴だがとても美しい。山間を田畑が広がり、村人がつくったであろうちいさな人工滝もあり、おれは山へばっかり入ってないでこっちの里の風景を撮るのが本当じゃねえか、としきりに思うんだけど、車の旅はそのあたりが不便でしょうがないね。今度じっくり歩いてみたいと思うのだが。
なぜ三脚を忘れるような愚行を犯したのか。それは、この山がふたたびぼくを待っている、そんな気がしてならないぼくなのである。自意識過剰も甚だしいのである。
 
 
*竪破山…標高658.3m。国道349号線を右折、県道60号十王里美線に入りしばらく行くと「黒前神社」と大きく書かれた看板があり、そこを左折し黒坂、鬼越地区に入る。道なりにまっすぐ進み看板と不動尊のある地点を右折するとまもなく対向車とすれ違えないくらい細い砂利道になるが、ひるまず進むと黒前神社の鳥居が見えてくる。さらに上に少し行くと駐車場がある。

   
ブログランキング・にほんブログ村へ
↑エラ・フィッツジェラルドの絶唱「WHAT'S GOING ON」を聴きながらカーティス・メイフィールドのフェイクを重ねてみる。つうかカウント・ベイシー・オーケストラまじ最高ポチッ
 

» Tags:山行き, 神社,

Trackback(0) Comments(6) by 雨|2008-03-20 15:03

[雨は遠いそらの上] 記事数:109

< 次の記事 | 前の記事 >

ゆたりブログ



「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)