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[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

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蜷川さんの逝った日に・・・

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10周年記念公演「カラスの声も、しわがれる・・・」が8日に千秋楽の幕を下ろしました。
決して「無事に」とは言えない、過酷な現場でした。
今年ほど座員の加齢を感じた年はなく、
いや、いままでも、少しずつ波は来ていたのですが
私が、良かれと思って課した、いくつかのテーマを
消化しきれないまま終わってしまった・・・という
なんともいえない心残り感覚です。

私は毎回、こんな感じで、満足して終わったためしがなく
毎回心残りなので、今年もという感じではありますが、
今年は例年とは違う課題を残して終わりました。

その、大きな原因は
私と座員との「演劇創作」に対する温度差でした。

かんじゅく座は、アマチュア劇団だけに
いろいろな目的で人が集まってきています。
本当に演劇がやりたい人から、
なんとなく居場所をもとめて、認知症予防、健康のため、
などなど、最初の動機は様々です。

最初はそれでいいのです。
でも、一回舞台に立ったら、その味をしめ、
さらにどん欲になってゆけばいいのですが
なかなか全員がそうはならない・・・
今回も、途中で役つくりをあきらめて、
ヤケのヤンパチな芝居をしてしまう人、
歩き方ひとつさえ練習を怠った人がいたのは、とても残念でした。
初舞台ならまだしも。

「演劇を楽してできると思うな」という環境で育った私が
座員たちと一緒に芝居を作るうえで大切にしてきたことは
いかに演じるか、ということでした。
その研究は千秋楽まで続きます。
稽古場を飛び出して、その役の立場の人を観察しに行くことは
1年目から何度も何度も言い聞かせていました。
それでも、どうしてもできないことがあるなら、
私は最大限の折り合いをつけて相談に乗ってきたつもりでしたが
残念ながら、あきらめてしまった座員の胸に届かなかったのです。

私は、かんじゅく座では特に、自分の脚本にこだわらないように、
稽古場では、脚本ではなく、座員ばかりを観て稽古を進めていました。
どうやったら、この役者で、嘘のない芝居を成立させられるのか、
そればかり考えていました。
稽古のたびに、何か一つでも、前の稽古から進歩させたい、と思うと
何度も繰り返し練習することになります。
結果、座員の口から出てくる言葉は
「疲れた」。

もちろん、頑張ってくれる座員もいますが
なかなか38人の熱を、同じ方向に向かせることができなかったのは
ひとえに、私の能力不足、芝居の魅力を伝えられなかった結果です。

ただ、もうひとつ、今年稽古場で、明らかに変わったことがありました。

私のダメ出しに対して反論が多かったことです。
これは、あまり今まではなかったことでした。

「こうしてほしい」に対して
「そうやってますけど・・・」との返答。

これは、冷静に冷静に考えた結果
高齢の第2期だということが分かりました。
以前なら、ここまで同じダメ出しをされなかったのに
「なぜ、また言われるのだろう、私はちゃんとやっている」
という自負を、私の言葉でまた壊されてしまうことの繰り返し・・・・

これは、私にとって、大きな課題となりました。
私の言い方を変えればいいのか?
または妥協すればいいのか?
どちらも、私にはできそうにありません。
じゃあ、そこまで来た座員は芝居ができないの?

ここが面白いところなんですが
そういう一癖もある人のほうが、芝居がうまいんです。

さて、
さすがに今年は43歳の私も疲れたようで
今日は振り込み作業も終わったので10時まで寝てしまいましたが
夕方すっきりと稽古場へ向かうと
いきなり蜷川さんの訃報が入りました。
数々の作品を手掛け、かんじゅく座よりももっと高齢のひとがいる
ゴールドシアターを支えてきた蜷川さん。
テレビで見た、その稽古場風景が脳裏に浮かびました。
80代の役者が、蜷川さんのダメ出しに全身全霊で向かっている姿は
圧巻でした。

やっぱ、妥協はだめですよね・・・・・

いくら高齢者でも、いくらアマチュアでも、
やっぱり、全身全霊で作品を創りたい。
今日の訃報は、私の背中にピシャリと鞭を打ちました。
ちゃんと、真剣に演劇がやりたい人と
一緒に舞台を創りたい。
そうすれば、「疲れた」以外の言葉も出てくるのではないか・・・と思うのですが
甘いでしょうかね。

以下、カラスチームの写真ができましたので
アップします。
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毎年、私たちを支えてくれるスタッフさんに、本当に感謝です。
彼らなしでは、ここまで来られませんでした。
ありがとう!

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(写真:谷川真紀子さん)

Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2016-05-12 22:10

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