４日間の万有引力体験

鯨エマの海千山千　演劇・映画創作生活

BLOG by 鯨エマ

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寺山修司氏率いる演劇実験室・天井桟敷から、
彼の没後に、当時寺山の片腕であったＪＡシーザー氏が
演劇実験室・万有引力という劇団を作って、ン十年。
劇団名を知る人は多いのではないでしょうか。

私も最初の万有引力観劇体験はたしか２０歳前後の時で
場所は吉祥寺の前進座劇場。
なんだか、ワケが分からなかった記憶しかないのですが
あれから２０年以上がたったいま、
裏方としてかかわることができたのは、なんの因果か、
とにかくその世界観に圧倒される４日間を過ごしました。

裏方と言っても、創作にかかわる裏方ではなく、
私はもっぱら、障害者の観客の対応で
メインは副音声の製作とナマガイド。
通し稽古の何回かを稽古場で見させていただいて
最後の数日で、一気に作るという、毎回あきまりのドタバタ作業でかかわりました。

演目は、かの有名な「身毒丸」。
初演から３７年の時を経て、オリジナルの再演です。
一言でいえば、継子、継母の間の屈折した愛を描く
究極のマザコン劇！・・・・なんていうと、失礼かもしれませんが
ストーリーは？と言われれば、こうしか答えようがありません。
そこに、音楽劇ですから歌と演奏が、嵐のように降り、沸き上がり、
化学反応を起こすのです。
オペラ調の歌と、琴と琵琶、そして中央にはバンドという
破天荒なブレンド音楽ですが、
世界観はしっかりひとつにまとまって・・・・いや、まとまらないで
流れだすといった、太刀打ちできないエネルギーがありました。

私はこの舞台を、目の見えない人にどう伝えたものか
悩みましたが、舞台美術家による「触ってわかる舞台セット模型」の存在もあり、
けっこう生々しく感じてくださったのではないかと思います。

さて、驚いたのは、２０年前に養成所の同期だったノブが、
この舞台に琵琶奏者として存在していたことでした。
きけば、芝居は足を洗って、いまは琵琶一本！
寺山の言葉を琵琶で・・・・という夢を、抱き続けていたのが
このたび見事に実現したんだそうで、その情熱が、見事に
舞台の上で炸裂していました。
彼女は、演劇をやっていたからこそ、演奏者でありながら
しっかりと舞台の上に身を置けているのだなあと
そんなことを感じました。
非常に印象的な存在感を放っていました。

万有引力と言えば、かつての寺山ファンが駆けつけるのか、
とにかく予約は完売、毎日補助席が４０席出るという
すごい人気でしたが、
客層は老若男女、昔からのファンに限らず、実にさまざまでした。
若者にも、まだまだ絶大な支持者がいる寺山修司。
本屋に行けば一回は「家でのススメ」を手に取ってしまう・・・・
そこは、人生の通過点のように、私たちの内部に潜む
トラウマの扉を叩いてくれるのでしょう。

音楽劇をやっている私としては、学ぶところ、感動するところ、
そして考えるところ、振り返るところ、盛りだくさんの、
４日間でした。
この機会をいただけたことに、心から感謝です。