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[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

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トマトの最期

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ベランダのミニトマトが、夏の疲れが出た顔で
私にさよならをいっている。
でも、まだ、伸びた茎の先のほうには、小さな青い実がついているので
枯れ枯れになってしまった根元に水をあげている。

ひと夏、収穫の喜びをくれたミニトマト。
ずいぶんみすぼらしくなってしまったけど
さいごまで、私は見守りたい。

トマトという、情熱的でかわいらしくて、奥深いこの実を
沢山の人が詩に描いてきた。
その一部をご紹介します。

〔霜枯れのトマトの気根〕    宮沢賢治
霜枯れのトマトの気根
その熟れぬ青き実をとり
手に裂かばさびしきにほひ
ほのぼのとそらにのぼりて
翔け行くは二価アルコホール
落ちくるは黒雲のひら
★★★

トマトとメロン  詩・相田みつを

トマトにねえいくら肥料やったってさ~
メロンにはならねんだなあ
トマトとねメロンをねいくら比べたって
しょうがねんだなあ
----------------------------------------
トマトよりメロンのほうが高級だなんて思っているのは
人間だけだねそれもね欲のふかい人間だけだな
----------------------------------------
トマトもねメロンもね当事者同士は
比べも競走もしてねんだなトマトはトマトのいのちを
精一杯に生きているだけメロンはメロンのいのちを
いのちいっぱいに生きているだけ
----------------------------------------
トマトとメロンをね二つ並べて比べたり
競走させたりしているのはそろばん片手の
人間だけ 当事者にしてみればいいめいわくのこと
---------------------------------------
『メロンになれメロンになれ!!
金のいっぱいできるメロンになれ!!』
と尻ひっぱたかれてノイローゼになったり
やけのやんぱちで暴れたりしているトマトが
いっぱいいるんじゃないかなあ

★★★

「トマト」 荘司武
トマトって
かわいい なまえだね
うえから よんでも
ト・マ・ト
したから よんでも
ト・マ・ト

トマトって
なかなか おしゃれだね
ちいさい ときには
あおい ふく
おおきく なったら
あかい ふく

「トマト売りの歌」 久保田早紀
そう・・・・荷車の影を長く引きづって
1日中働いたって明日は買えない
この街に古い者なら誰でも
知っているさ 話し好きのトマト売りを
「お嬢さん おひとつ
 燃えるような恋の赤い実をどうぞ」
路地から路地へと声かけて歩く
気楽なもんさ 人生なんて商売は

これでも若い頃 きれいな娘連れ
エストリルの海岸を散歩したこともある
白壁にもたれて昔話すれば
子供たちが珍しそうに集まってきた
「おじょうちゃん おひとつ
 お日さまからこぼれた赤いトマトを」
路地から路地へと声かけて歩く
お人よしの笑顔には深いしわがある
★★★

トマト    谷村新司

窓の向こうにはアメリカ橋と
ガーデンプレイスの灯りが見える
「まるでまんはったんだね・・・」あなたのジョークに
よろこびを感じてた 1DKの狭い部屋
何もないけれど幸福だった
私の手作りの 小さな食卓
トマト嫌いの子供みたいな
あなただけど 私は愛してた
明日を見ないで あなたを見つめてた

恵比寿駅で待ち合わせして 買い物するのがお決まりだった
「きっと回りの人は和かい夫婦だと思ってる」と
ふざけたあなたを少し憎んでた
不確かだから幸せだった
あなたがすべてとは言えなかったけど
大人になって振り返る時は
きっと言えるよ「あなたを愛してた」
トマト嫌いの「あなたを愛してた」

残酷な季節の後で あなたは部屋を出て行った
思い出のコートだけ残して
私は部屋の窓越しに アメリカ橋に消えていく
青春のかけらだけ見ていた

山手線に乗り 渋谷に向かう
朝の太陽が 私を照らす
恵比寿に近づくたび 思わず振り向く
あの頃に2人して 暮らした2人のあの部屋
あなたも時々は思い出すかしら
傷つけ合いながら 暮らした頃を
じつは あなたにかくしてた秘密
私の好きなもの それはトマト
言えなかったけど トマトが好きだった

不思議ね あれから トマト食べられなくて
好きなのに嫌いになった・・・
好きなのに嫌いになった・・・

Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2014-09-19 22:10

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