ご利用規約プライバシーポリシー運営会社お問い合わせサイトマップRSS

[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

< 次の記事 | 前の記事 >

知らない人々・知ろうとしない人々

このエントリーをはてなブックマークに追加

先日、4日間かけて、日本劇作家大会に参加させていただきました。
公演に限らず、様々な演劇関連のシンポジウムの中で
私が参加したのは「シニア演劇」にかんするシンポジウムと、
路上で一人2役を演じる「街角リーディング」。

私はスタッフの仕事は一切なかったため、自分の出番以外は
他のイベントを自由にみることができ、いろいろと勉強になりました。
なかでも内田樹氏と劇作家平田オリザ氏の対談、
「文化資本はどこで蓄積されるのか」は、興味深く聞きました。

おふたり、それぞれが教育の現場で子供から大人(教員)までを
相手にするなかで、日々感じていることを話してくださるのですが、
一番印象的だったのは
「自分が知らない情報は、知らなくてもいい情報だ。と勘違いする人が多い」
という話でした。

例に挙げていらっしゃったことで、私も共感することが
「最近、『私はテレビを見ないんです』と堂々という人が増えてきた」ということ。
テレビの視聴率がさがるだけでなく、新聞の購読者も減り続け
いまや、コミュニケーションの共通の土台が亡くなっているという危機感です。

新聞、テレビはいつのころからか、信用しがたいものになりました。
私も日々、NHKのニュースに「これで受信料を払えというのか!」と
火炎瓶を投げたい気持ちに駆られていますが
でも、内容や局の傾向はさておき、
テレビや新聞は、国民のだれもが観ていて、
自分の興味のないことでも、必要最低限の共有する知識があった時代があります。
ところが、ネットでしか情報を得ない人が増え、
一見、話題満載に見えるインターネット上のニュースというのは、
かなり、自分で制限してしまっている世界範囲なのです。

わたし自身、テレビはあまり好きではありません。
特にバラエティは、5分と持たない・・・。
それでも、たまにみたり、介助先の家で利用者さんの好む番組を一緒に観て
「わぁ、こんな番組やってるのか!」と驚くことがあります。
番組そのものではなく、その番組が堂々と
視聴率を上げていることに驚いたりします。
しかし、いま、何がもてはやされているのか、
世界中の命に係わる大事な報道を見ずに、みんなが観たいと思っているのは何なのか、
を、知ることは、無駄ではないどころか、
私が今の立場で、どういう姿勢で生きるかを考える
かなり重要なメッセージです。

高齢者と話をしていて「なぜ、彼らはこんなに知らないことが多いのだろう」と
唖然とすることがありますが、
もっと問題なのは「知らない」よりも「知ろうとしない」ことなのでしょう。
私がデモや集会に行ったことの話題を、いっていない人と共有しようとすると、
ほとんどの人は顔をそむけます。
「忙しいのに、いろいろ参加して偉いのね」で、終わってしまうことが殆どで
悪い時は「俳優がそんなこと、大きな声で言うもんじゃないでしょう」などと
たしなめる人までいます。
そして結果的に、彼らは、選挙にさえ行きません。
私はたびたび「無知無関心は罪だ」と言っていますが
私たちは社会に生きる以上、関わり合わなければならない、というのが、
もう宿命なのです。

ここでかならず突っ込まれるのが
「そういう性格の人もいる」という意見。
「あなたみたいに、なんでもいえる人はいいけど・・・」
しかしどうでしょう、
引っ込み思案でも、恥ずかしがり屋でも、寡黙でも、厭世的でも、
社会に一員であることは変わりなく
交流なしには生きてゆけないのです。
交流というのは、仲良くおしゃべりするということではありません。
他人の作ったものを買い、自分の作ったものを誰かが使用する、
それだけでも交流です。
(演劇なんて、不特定多数の方との交流だらけです)
いくつになっても、仕事はリタイアしたって、社会人はリタイアできないし、
日本人であることも簡単には放棄できないのです。
「性格」のせいにして逃げるのではなく、
違う意見、考えでも、堂々と生きられる、そういう教育が必要だと思います。

先日の中野区区長選の投票率にがっくりし、
川内原発のレポートに脱力し、沖縄の基地問題に悔し涙を流し、
この連続する「暖簾に腕押し」状態に
正直、嫌気がさすときもあります。
しかし、もっともっと社会に通じ、あらゆる問題に対応してきた
内田氏と平田氏の話に、「知っている人」だからこそ見えている
突破口のようなものを感じました。

まだまだ知らないことがある!ということの自覚が
今日の第一歩になるのではないでしょうか。

~「We」連載のおしらせ~
定期購読本「We」で、5月から私の隔月連載が始まりました。
ご希望の方は送料サービスで送らせていただきます。
1冊800円です。
FAX03-6300-0673まで、名前と住所を書いて送信してください。
よろしくおねがいします。

Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2014-06-17 08:08

[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

< 次の記事 | 前の記事 >

ゆたりブログ



「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)