以前所属していた事務所は、今のようにオーディションがなく
「ああ、仕事はともかく、せめてオーディションに、いかせて。」
と、心の中で切望していた。
今は、オーディションが多い。
というか、仕事の始まりは9割がオーディション、
といっても過言ではない。
こういう事務所の性格が、私には非常に合っている。
同時に、不本意ながらキャスティングにも携わるようになってしまった。
これは、私の俳優業とはまったく別の角度から
頼まれたときだけ、やっている。
普段、安ギャランティで私の舞台に出演してくださる役者さんに
なにか恩返しできればという思いもあって
できる限りのことをするようにしているのだが・・・
先日、あるオーディションで
素人の俳優に、何人か参加していただいた。
残念ながら落ちてしまった男優さんから
「わたしは終始、ブッチョウ面をしていたから
落ちると思っていました」
と、自分が落ちたことの理由を面々と書き連ねたメールが来た。
おっさん、アホやなあ・・・・
(もちろん、「アホですね」という返信はおくっていないが
最近「どうして私はおちるんでしょうか。」と
私に聞いても仕方がないような質問を良く受けるので
ここに、かいてみることにした。)
落ちるのに、理由なんかないのだ。
ニコニコしていても、ブスッとしていても、
落ちる人は落ちる。
受かる人は受かる。
もう、入ってきた瞬間にわかる、
だって、監督は、何千人、何万人と審査をしてきた人だ。
だけど、
せっかく来たのに、入ってきた瞬間だけで追い返したら申し訳ないから
一応、セリフとか読んでもらったりするのだ。
(以上、某監督のお話)
もちろん、そこで、どんでん返しが起きることはある。
しかし、それは稀でしょう。
で、最後の最後、2~3人に絞った所で
どうやってきめるかといえば、
それはもちろん、役にあっているかどうかなのだが
ある監督は
「そりゃ、もちろん、おっぱいの大きな子だよ!」といっていた。
冗談かと思ったら、
「だって、考えてもみなよ。
2~3日、一緒に現場にいるんだぜ。楽しくやりたいじゃん♪」
ごもっともです・・・・さようなら。
だから、なんとも理不尽なお仕事なのだ。
それに、いちいち理由なんかつけていたら身がもたない。
未練なく、「はい、次いこう!」といえる人が
いま、残っている人なのだと思う。
なやまずに、「はい、次。」といっていると、
いつか、うかるんです。
ね、気長で、気楽で、ついてゆけない世界でしょ?
ものによっては、私がオススメした非常に面白い役者さんや
ベテランの方が、バッサバッサと切り捨てられる瞬間を
目の当たりにしなければならないこともあり
そんなときは正直、心労・・・
でも私は、かつて、自分がオーディションに落ちるたびに
ダメージを受けていたのが
「傷つくようなことではないのだ」と、開き直れるようになった。
要は、パズル。
で、そう思ったとたん、受かることがふえてきた。
不思議なものです。
そういえば、私のすきな、ある役者さんも
何百回と、空振りしたといっていた。
でも「はい、次!」と、アホのように、開き直って、玉を待つんだそうな。
そして、アホでいることを、どこかで楽しんでいるのだった。
私はこれからも、残酷なキャスティングの現場に携わりながら
役者を続けてゆくのだが
この理不尽さ、不安定さが、なんとも言えず、心地よい。
アホですね。
落ちてダメージを受けている方には、こう言っている。
あなたが悪くて落ちるわけではないよ、
もし、この仕事が好きだったら、また受けてね、
もし、いちいち傷つくようだったら、やめたほうがいい、
でもそれが、正常な精神です。
~本日のありがとう~
キムチを買ったら、お釣が私の手のひらからコロコロところがって
棚の下へ。
店員さん、ホコリだらけの棚を動かしてくれた。
ありがとう。
おかえり、50円玉。
そして店員さん、お掃除宜しくね。
Trackback(0) Comments(2) by 鯨エマ|2011-02-12 23:11
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